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皇太子殿下はご機嫌ななめ
第41話 「変わりゆく人々」
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通じて辺境開発を行っている皇太子。その辺境を破壊しようとする同盟。民衆がどちらを支持するのか、これほど簡単な問いかけはないだろう。
 答えなどすぐに出る。
 頭の痛い話だ。

 ■ノイエ・サンスーシ 薔薇園 ジークフリード・キルヒアイス■

 宰相閣下がいない間、私とラインハルト様は皇帝陛下に呼ばれた。
 場所は薔薇園だった。
 陛下の私的な空間。
 ここに呼ばれるなど、門閥貴族でもそうそうないらしい。
 女官に案内され、やって来たら、すでにフレーゲル男爵が席に座っていた。
 ラインハルト様と目があったフレーゲル男爵が視線を逸らす。まだ蟠りがあるらしい。そう簡単には割り切れないのだろう。難しい問題だと思う。

「まあそう固くなるでない」
「はっ」

 陛下がフレーゲル男爵に向かって、鷹揚に話しかけられた。
 こういうところは宰相閣下とよく似ておられる。
 さすが親子というところだろうか?

「ラインハルトとジークフリードも座るとよいぞ」
「はっ」
「はい」

 私達も席を勧められて、腰掛ける。
 なんといおうか居心地が悪い。宰相府とは大違いだ。
 あそこでは誰が椅子に座っていても、気にはしないし、不思議でもない雰囲気が漂っている。

「そなたらを呼んだのは、他でもない。これからの帝国についてじゃ」

 陛下がおもむろに、頷きつつ話し出した。
 それにしても、これからの帝国についてとは……。いったいどういう事だろうか?
 私達は権力者でもないどころか、まだこどもと呼ばれる年だ。

「不思議に思うやもしれぬが、大事な事じゃ」
「と、仰いますと?」

 フレーゲル男爵が一度、私とラインハルト様に目をやってから、陛下に向かって問い返した。

「うむ。いまルードヴィヒが帝国改革をしておるが、ルードヴィヒの代だけで改革が終わるほど、簡単な事ではあるまい。二代、三代と続けていかねばならぬ」
「なるほど、仰るとおりです」

 ラインハルト様と私は、顔を見合わせてしまいましたが、フレーゲル男爵が深く頷きます。

「そして卿らは、新しいこれからの帝国にふさわしい貴族とならねばならぬのだ。それが如何なるものなのか、予にもはっきりと見えておらぬ。じゃが、貴族も変わらねばならぬのは確かじゃ」
「新しい帝国にふさわしい貴族……」

 フレーゲル男爵の声が震えています。
 何を思っているのか?
 しかし平民が変わっていくように、貴族もまた変わらなければならない。
 平民に権利を与えるというのは、そういう事なのだと、陛下が仰っています。
 口には出してはいませんが、宰相閣下もそれを解っておいでなのでしょう。
 それが解らぬほど、愚かな人だとは思いません。

「これからは貴族である事を
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