過去編
挿話集
聖燗幻夜A
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つな」
「……お、お手柔らかに」
金属剣と木製の鞘が擦れる特有の音と共に三本の騎士剣が抜かれた。突発事態に行動が遅れ気味の両軍の間を抜け、レイは1人その重装騎士達に向かってゆっくりと歩んで行った。
背後のレイドからの奇異の視線を感じながら振り返らず、真っ直ぐに進み始める。三騎士がターゲットを見付け、兜の奥の赤い目を光らせる。
『ウォォォォッ!!』
人型のクセに獣のような咆哮を上げた騎士達は素早く俺を三角陣に囲い、微妙にズレながら騎士剣でソードスキルを発動する。
(……俺を相手にそれは悪手だぜ?)
両手剣縦振り下ろし《グランド》
剣を振り下ろした後に一歩引くという回避動作までが1つの技に組み込まれているため、技後の隙を突きにくい基本技だ。
(速度、角度、人間とあいつらのガタイの相対比……ここか)
半歩下がって大太刀に手を掛ける。その瞬間、大質量の巨剣が半秒間隔で振ってくる。その様子を遠くから見ていた『そのこと』を知らない面々はあいつは何がしたかったんだと言わんばかりに肩を竦めて自らの標的である聖像画やニコラウスに視線を戻そうとした。
だが、甲高い破砕サウンドがそれを遮る。
「「「な…………」」」
……んだあいつ。と誰もが言いたかっただろう。
煙の中には大太刀をダラリと片手でぶら下げ、平然と立っている銀髪のインプ。間違いなく先程叩き斬られたはずのプレイヤー。おまけに騎士達の剣には縦にひびが入り、今にも砕けそうだった。
「《武器破壊》……3本も同時にやるなんてな」
驚いていない……というよりは異常事態に慣れているキリト達は苦笑するのみ。残された6人は武器を構え直した。意図せずして沈黙に満ちたボス部屋にアスナの凛とした声が響く。
「行くよ、みんな!」
ニコラウスが捨て台詞と共に消滅したのはそれから10分後の事だった。同時に三体の騎士も四散し、次層に続く階段の鍵がガチン、と外れた。
アスナは歓声を上げるレイドメンバー達の間を縫うように駆けて行った。門の前に辿り着き、ふと後ろを振り返る。数秒遅れてキリトを始めとする仲間達が追い付いてくる。
リズが肩に手を置いて言った。
「ほら、早く行っちゃいなさい。どうせもうすぐ誰が先に次層に行くかで揉めるんだから」
「うん……でも、リズ達は?」
エギルやクラインがレイドの方を向いて睨みを利かせているのを見て嫌な予感がしたアスナはその手に自分の手を重ねながら言った。アスナのその問いに答えたのはレイだった。
「ま……持って10分か15分。2時間しないと次層主街区は開通しないからその間に、な?……ほら、ユイも」
「
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