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乱世の確率事象改変
改変者の胎動と鳳凰の鼓動
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ることがある。しかしあまりにおかしい。狂気に堕ちたならばどうして笑みを携えていないのか。
 殺しを行うモノは異常な空間に高揚し、強大な力を持つモノは無意識の内に敵の脆さから笑みを零してしまうモノだ。
 しかし彼の表情はただ無表情。ただ淡々と、つまらないモノを捨てるように、命を軽く切り刻んで、踏み潰していく。
「星、ここはいい。雛里のもとへ行け」
 ふいにかけられた声に秋斗殿の顔を見る。その目を見てしまった、合わせてしまった、覗いてしまった。
 あったのは昏い闇。吸い込まれそうなほどに昏く、深く、絶望しか見つける事のできない色。
 これはこのままではダメだ。しかしまだ私を認識できたなら大丈夫なのかもしれない。
 そう考えて一つ頷き、雛里のもとへ向かうことにした。


 どこを見渡しても賊はもういない。
 南は倍の兵で囲み、追い立てるように戦っていたから、賊は逃げて中央で『あれ』に殺されるか。
 先ほどの光景を思い出していると幾人かの兵の護衛と歩いてくる雛里を見つけた。
「星さん。状況は?」
 彼女の言葉にゾクリと背筋に悪寒が走る。なんだ? 何かが違う。
 違和感を感じ取ったがまだ思考に潜る事はせずに雛里に対して状況を伝える事にした。
「村の中央付近に敵が集中、秋斗殿が迎撃している」
「そうですか。うまくいきましたね。では星さんは北に向かいある程度賊を追撃して戻ってきてください。逃げた賊が向かう拠点への尾行に二、三人付けるのも忘れないでくださいね」
 これがあの雛里……か?
 心が凍りつくような冷たい声でつらつらと指示を並べ立てる彼女からは、いつもの様子からはあまりにかけ離れすぎていて別人に思えてしまった。
「伝令、中央にて戦闘している部隊は追撃無し。民の安全確保のため民家一つ一つを確認、終わり次第100を広場に残し、他は北側に待機してください」
 さらにテキパキと指示を出し続ける。
 これが軍師か、しかしあまりに――
「……雛里」
「私たちの部隊は殲滅を行いつつ民の安全を確保し、半分は私とともに北に、もう半分は――」
「雛里!」
 その姿が、声が、瞳が、あまりに哀しくて、大声を出して彼女の言葉を遮った。
「……星さん。作戦は継続中です。迅速に行動を」
「すぐ行く。だが一つだけ。広場のまとめは雛里がしたほうがいい。北側はそのまま私がまとめる」
 彼に、秋斗殿に……任せても大丈夫だろうか。
 いや、互いに必要だ。少しでも共通点があったほうがいい。初めての戦を行ったなら、二人ともが共感できるはずだろう。
「……わかりました。広場の指揮は私がします」
「ではいってきますぞ、軍師殿」
 出来る限り軽く言って私はその場を後にした。どうか二人とも壊れないで欲しいと願って。

 †




 人を
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