第四十四話 少年期【27】
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ダムになっていた。
それでも、みんな本当に楽しそうに笑うのだ。冷や汗を流したことや思考が停止しかけたことは何度もあったが、それと同じぐらい一緒につられて笑ってしまったことがあった。相手は全力で向かってくるので、こちらも全力で相手をする必要がある。そのため、大変なのは本当に変わらない。
それでも、彼女にとって自慢の子どもたちだった。
「それなりに事情がある子も多いけど、そんな事情が吹っ飛ぶぐらい楽しそうよ」
「次元世界には、いろんな子がいるからね。あの双子の子もいるんだっけ」
「……うん。そういえば、テスタロッサさんの裁判はあなたも担当していたのよね」
管理局は、警察として行政権を行使する場面がテレビでは多く取り上げられている。それと同時に、裁判官として司法権を行使する場合も取り上げられていた。同じ組織で2つの権利がある危険性は、管理局でも配慮されている。基本的に警官と裁判官は別所として扱われているからだ。お互いの仕事には、不可侵となっていることが管理局で決められていた。
その例外となるのは、1つだけ。この世界で行政権と司法権の両方を扱える『執務官』と呼ばれる管理局の顔の様な存在だけだった。検事であり、弁護士でもあり、艦隊指揮や凶悪事件を担当することもある役職。1つの組織に権利が複数あることの危惧はあるが、それと同時にメリットも同様にあった。
それは執務官の存在。事件をその目で確かめられ、それを下に裁判の場で大きく反映させられる。加害者、被害者の思いを直接伝えられるメッセンジャーとなれ、事件の多い次元世界でスムーズに裁判を進めることができる。管理局で高い権限を持つが故に、優れた知識と判断力、実務能力を兼ね備えた者だけがなれる狭き門だった。
閑話休題。男性はそんな管理局に勤める、司法関係の人間であった。まだ若輩なため、管理局全体の事務をこなしながらになるが、裁判関係の書類を処理している。そんな中で、彼は約2年ほど前に起きた駆動炉の暴走事故を担当した1人だった。
最初に手にした書類には、開発グループの不祥事について書かれたものだった。私利私欲のために、駆動炉を暴走させた開発主任。それが、彼がプレシア・テスタロッサと呼ばれる女性の第1印象だった。
だが、事件は思わぬ方向へと進んだ。書類の偽造が発覚し、真実が暴かれた。正しいと思っていたことが真逆だったことに、若かった彼は何よりも衝撃を受けた。そして、それと同時に自身を恥じた。仕方がないことだった、と言い訳はできる。それでも、司法を司る者として、人々を導く者として、あってはならないことだった。
それは、偶然管理局の施設で見た、あの家族を見て強く思うようになった。泣きそうな笑顔で子どもたちを抱きしめるプレシアと、本当に嬉しそうな子どもた
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