第二十七話 〜夜に舞う喋 中編【暁 Ver】
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──── 返すことも受け止めることも出来ずに。唯、聞くことしか出来なかった。意思のない木偶のように押し黙ったまま。
「そうか、ご苦労」
恰幅のいい男は──── 言葉短くそれだけを告げると、通信を切る。豊かな顎鬚に手をやりながら何事か思案するその姿は熊を連想させた。椅子に座る男の側らには秘書のように──── もしかしたら秘書なのかも知れない。一人の女が立っていた。ショートヘアと切れ長の瞳に眼鏡をかけたその姿は十二分に綺麗だと言えたが、変化に乏しい表情がマネキンのような印象を受ける。
「朗報ですか」
女が透き通るような声色で男へと尋ねた。男は鼻を鳴らす。
「さて、な。儂が六課へ送り込んだ男が良い仕事をしてくれた。突き上げる材料には持って来いだ。……忌々しい。犯罪者が立ち上げた部隊など、他の誰が認めようとも儂が認めん」
──── おまえが、それを言うのか
「どうかしたか?」
「いえ……何でもありません。会食のスケジュール調整をしておりますので、何かありましたらお呼びください」
女は背筋を伸ばしたまま、足音も立てずにオフィスを後にする。だが、何かを思案するように立ち止まると、男がいるオフィスの扉へ視線を送り──── ほくそ笑んだ。
「つまらない男。同じ穴の狢って言葉を知ってるのかしら……六課は面白いことになってるみたいだけど、どう切り抜けるのかしらね。さて、ばれないうちに退散しましょうか」
そう呟きながら女は、妖艶な笑みを顔へ貼り付けたまま……再び廊下を歩き出した。ヒールの音を、誰もいない廊下へと響かせながら。
その日。あたしの一日の始まりは、来るとは思っていなかった待ち人からのコールで始まった。
「お兄さんっ、今までどこにいたんですかっ!」
自分でも驚くほどの怒鳴り声に、スクリーンの中のお兄さんは露骨に顔を顰める。
「いや……そんなことを言われましても。所用で外へ出ていたんですよ。……何かありましたか?」
「何かって……アスナは、そっちにいるんじゃないんですか?」
「は? いえ、帰ってきていませんが。お休みなんですか?」
帰って、いない? スクリーン越しに見るお兄さんの様子からは嘘をついているようには思えない。……この人に限っては、表情や様子からは判断できないけが。疑っていてはきりがないから知らないと仮定して話を進めることにした。それにしても、アスナが真っ先に頼るのはこの人だと思っていたのに。
「お兄さん。随分前……と言っても、一週間ちょっとくらい前に、アスナが有休を取得してそちらへ帰った事がありますよね?」
「ええ、覚えています。しかし、アスナ
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