第二十七話 〜夜に舞う喋 中編【暁 Ver】
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のお菓子を携えて訓練校へと訪れた。
──── あんまり器用な方じゃなくてなぁ。娘が二人いるってのに情けない話だが、子供が喜びそうなものってぇと、おもちゃと菓子くらいしか思い浮かばねぇ。
そう言いながら困ったように笑っていたのが、記憶に残っている。あたしには家族と呼べる人は兄以外にはいなかった。亡くなった両親に関しても殆ど記憶に残っていない。だからかも知れない。『父親』というのは、こんな人のことを言うのだろうと漠然と考えていた。もしかしたら、アスナも。そんな父性をナカジマ三佐に感じていたのかも知れない──── だからこそ。
「はい、必ず」
思い人に繋がらないラブコール。……実際はそんなロマンチックなシチュエーションではないところが悲しいところだ。
「やっぱり連絡取れない? お兄さんと」
「えぇ」
「アスナと一緒にいるのかな……ちょっとマズくない?」
「何がよ」
「だって、お兄さんって管理局にあまりいい印象は持ってないよね」
「それは、違うわスバル。いい印象を持っていないんじゃなくて、何とも思ってないのよ。興味がないと言っても良い」
そう。あの人は……管理局云々ではなく、アスナに害するものと、そうでないもの。それが全てなのだ。以前からずっと気になっていた一つの疑問──── アスナとお兄さんのあの信頼、いや依存はどこからきているのか。兄弟愛とも家族愛とも……況してや恋人同士の愛情とも違う。正直に言えば、時々恐くなるほどだ。あの二人の過去に。一体何があったのだろう──── そうか。
「どうしたの? ティア」
アスナは犯人じゃない。アスナは人なんか殺さない。これは大前提だ。だとするならば……アスナがあんな事を言い出した理由は一つしかない──── 誰かを庇ってるんだ。そして、アスナが庇う人間なんか。一人しかいない。……最悪だ。いや、ちょっと待て。
──── おにいちゃんは、人なんかころさない。ころしたこともない。
いつだったか、アスナが口にした言葉。大抵の人間は人など殺したことは無いと思うが、何故敢えてそれを口にしたのか理由はわからない。その時のアスナはどこか遠くを見ているような瞳で、それが強く脳裏に焼き付いていた。だとしたらいったい誰を……わからない。あたしの知っている人物なのか、それとも物語に登場していない人物がいるのか。
「何かわかった?」
スバルの問いにあたしは首を振るしかなかった。ピースが致命的に足りない。
「そっか……ちょっと寂しいね」
「何がよ」
「どうして相談してくれなかったのかな……あたし達ってアスナにとって、その程度なの?」
スバルの悲しみを帯びたその言葉を、あたしは
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