第二十七話 〜夜に舞う喋 中編【暁 Ver】
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「殺人は犯罪だと言ったか、若いの。……お宅も同じ穴の貉じゃあねぇのかい?」
タカムラの片眉がぴくりと反応した。……あたしも内査の噂は聞いたことがある。憶測の範囲を出ないものだけれど。
「……何の話だ」
「管理局に長くいるとな。色んな噂が耳に入ってくるもんだ」
「どんな噂か知らんが、唯の噂だ。根拠のない噂に踊らされるなど器が知れるぞ?」
激高しかけたシグナム副隊長を八神部隊長が手で制した。無礼な物言いにも、ナカジマ三佐は温和な表情を崩さない。
「昔から火のない所に煙は立たねぇって言ってな。『内偵』がお宅だけの十八番だと思ってると……足元を掬われるぜ」
ナカジマ三佐とタカムラは暫し睨み合っていたが、やがて。タカムラは舌打ちをすると、部隊長室を後にした。
「助かりました……ナカジマ三佐」
八神部隊長は、そう言いながら力が抜けたように椅子へと身を沈める。だが、少し不味い事態だ。
「まぁ、知られちまったもんは仕方ねぇな。お偉いさん連中には、いいネタを与える事になっちまうが……そうなる前に、アスナ坊を見つけてやらねぇとな」
「はい。せやけど、ナカジマ三佐。内偵って……彼を調べてはるんですか?」
八神部隊長にそう問われたナカジマ三佐は、少々ばつが悪い表情をしながら、スバルを見た。……なるほど。スバルが何か依頼したわけか。あたしに黙っているのは何か理由があるんだろう。
「いや、別件で少しな。にしても、アスナ坊がなぁ……身内だからといって、甘やかすのはいけねぇが……だからといって、これっぽっちも信じてやれねぇんじゃ寂しいからよ。ティアナ、こいつをアスナ坊が戻ってきたら渡してくれ」
そう言いながら右手に下げていた紙袋をあたしへと差し出す。中には、アスナが喜びそうなたくさんの──── 駄菓子。
スバルとギンガさんの父親であり、陸士108部隊長でもあるナカジマ三佐との出会いは、ドラマチックな事は何もなく、ごく有り触れたものだった。ギンガさんと同じように、スバルが心配だったのであろうナカジマ三佐が訓練校を何度か訪れた。唯、それだけの話だ。アスナとの出会いは……有り触れてはいなかったが。
──── ……おっちゃんの髪、まっしろですね。
──── はは。だろう?
──── ……おじいちゃん?
──── そのうち、おじいちゃんって呼ばれるんだろうがなぁ。実はな、この髪……三年周期で色が変わるんだぜ? この前は赤くなりやがった。その前は黄色だったか。
──── ……信号みたいな?
初対面でアスナにペースを引っ掛き回されなかったのは、ナカジマ三佐が初めてだった。それ以来、回数としてはそれほど多くはなかったが、ナカジマ三佐は色取り取り
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