暁 〜小説投稿サイト〜
箱庭に流れる旋律
歌い手、同行する
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「“ハーメルンの笛吹き”についてなら、このジン=ラッセルが誰よりも知っているぞ!」
「・・・は?え、ちょ、ちょっと十六夜さん!?」

 そう、高らかに宣言した。

「めっちゃ知ってるぞ!とにかく詳しいぞ!説明こそ出来ないけど、とりあえずこの件で“サラマンドラ”に貢献できるのは、“ノーネーム”のリーダー・ジン=ラッセルを措いて他にいないぞ!!」
「ジンが?」

 ひたすら大声で宣言する逆廻君に、サンドラちゃんがそう返す。
 キョトン、とした顔を向けているので、子供っぽさが出ているけど、すぐに表情を戻す。

「では、他に申し出がなければ“ノーネーム”のジン=ラッセルを同行者の一人としますが、よろしいか?」

 そして、サンドラちゃんがそう問いかけをすると、参加者の間にまたどよめきが走った。
 まあ、ノーネームにこんな大役を任せるなんて、普通はしないから、当然ではあるんだよね。
 さて、ジン君の説得は逆廻君がやってるみたいだし、こっちは僕が担当しますか。

「この二人の身分、知識量については僕が保証させていただきます。ジン=ラッセルや逆廻十六夜は僕と同じ“ノーネーム”に所属していますし、書庫にはかなりの量の書物が保管されていました。もちろん、その中には魔王対策として“グリム童話”の資料、“ハーメルンの笛吹き”の伝承についての資料もありましたので、今回の決議でも役に立つはずです」
「と、“音楽シリーズ”の“歌い手”ギフト保持者も言っていますので、よろしいでしょうか?もちろん、この人の身分に付いては、“サラマンドラ”が今回依頼した相手ですから、私達が保証します」

 サンドラちゃんがそう言ってくれたことで、その場は纏った。
 さて、何故僕が呼び出されたのやら・・・

「オイ奏。今回の一件で御チビの名前が売れたら、これからオマエに依頼があった際にチラシを配ってくれないか?」
「また急だね・・・どんな?」
「“魔王にお困りの方、ジン=ラッセルまでご連絡ください”って感じか?」
「絶対嫌だって言ったでしょう!?というか、なんで名前を入れることにこだわるんですか!?」
「まあ・・・“ノーネーム”じゃあ意味がないから、ジン君の名前は必要だよね・・・」
「奏さんまで!?」
「はあ・・・仕方ねえ。なら一文字伏せてやるよ。“魔王にお困りの方、ジン○ラッセルまでご連絡ください”って感じでも、」
「お か し い で し ょ う!?そこを伏せたところで何が変わるんですか!?」
「というか、僕が名乗りの中でジン君のフルネーム出してるし、伏せたところで何の意味もないけど」

 この状況でもこんな会話が出来る逆廻君のことを、少しすごいと思いました。

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