第四章
桐山霧夜の思考は捻り捩れて螺切れる。
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った腐った目って魅力的に見えないかな?ちょ、待っ、俺も可愛いぬいぐるみにしてほしい。キメェ……。
ぬいぐるみになりたい、だなんて子供でさえ容易には思い付かん願望だろう。
でも、そんなことに少し憧れる自分の気持ちとやらがわかった気がした。
人でなかったら、どんなに、僕は、僕は、僕だったか。
醜ささえ、愛されるなら、僕は人を愛せただろうに。愛されただろうに。
愛されるものもあるのに。輝きも、プラスもマイナスもここにはあるのに。
人は人の何を見るのか、僕は分からない。
僕は見られるだけの、ぬいぐるみになりたい。
愛されるだけの、綿で居たい。
本をまた一冊、手に取った。
物語が書かれている。ミステリーだ。単純な文章の束。文字の羅列だ。
しかし描かれているのは、物語だけではない。これを手掛けた作者、その人の人生がページに滲んでいる。
出会い。語らい。そして旅立ち。歩き。立ち止まり。嘆き。喜ぶ。そして別れる。
きっと、そんなベタな現実のシーンがあるのだろうに。
――僕は何処だ?
物語は素晴らしい。読むだけで、憧れを、心を、生き方を、その足跡を奪える。
だが、そこに僕はいない。
そこに醜い僕はいない。
笑えなかった。きっと当分笑えない。笑えなかった。
作り笑いができない。卑屈そうに、嫌味に笑えない。
笑いたくなかった。
泣けなかった。泣かなかった。涙は死んだ。
怒れなかった。怒らなかった。怒ったことがなかった。
面白くなかった。何をしても、面白い面白いと繰り返した。……面白くなかった。
思い通りには行かないものだった。結局今もそう。
思いがなかった。結局僕はそう。
誰かのためと思って僕は生きていた。
しかし、それは僕のためではなかった。
結局本を読んでいただけだった。
どうでもいい。
《他人に図々しく在れ。》
それでも、何も変わらない。
そんなの、独り善がりだ。
僕が勝手に宣うだけだ。
図々しく在ったところで、重量さえ増えない。
――帰ろう。
これ以上考えた所で、
僕には何もない。
× × ×
本当に何事もなく帰ってきてしまった。
どっかその辺のラノベであれば、偶然クラスメイトにあって恋が芽生えてうんたらかんたらするのだろうけれども、僕はこんなにも独りだった。てか俺クラスメイトの名前知らなすぎるし。
……当然の結末だった。
フツーに玄関を抜け、階段を這い、壁に野垂れ、床にへばると、もう昼が過ぎていた。
「はぁ……ん?」
なんだろあれ、紙か?
紙か……紙ですね?
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