第四章
桐山霧夜の思考は捻り捩れて螺切れる。
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。と、言うか、そんな本あるはずがないのである。
本という時点でもうダウト。誰かの思想も正しい哲学も世の中の真実も妥協しあって出来る最善の取り扱い説明文も要らないのであるし、糞の役どころか適当な役にもつけないのであった。……いとおかし。何故こんなに話にならない人間が生まれたのか。……と言うか何故俺は本屋に来たのか。こちらの方がよっぽど《何故》だ。
そう言えば、そう言ってもないし何も言ってないけれど、俺は材木座の作文を読まないといけないのではないだろうか?あの量は割かしあって、まあ量が無くても気が滅入ること受け合いなのだが、時間は、平気だろうか?
何となしに、心配だ。少し本を見て回ったら、すぐ帰ることにしよう。
手に本を一冊取ってみる。
本を開いてパラパラと捲る――でも興味が湧いてこない。何か物悲しくさえなってくる。
――すぐ棚に戻した。
そして、また俺はいつもの浮遊感に襲われてしまったようだ。
依然として目の前は灰色。
正しく小説の一ページのような配色を施した世界。けれど描かれているのは陳腐で幼い幼稚で稚拙な文章だけ。まるで、書くものが見当たらない憐れな作家が産み出した駄作のようだ。ただの無能が躍起になって吐き出したそれは、もはや文字ですらなく汚れだ。きっとその語れない物語の主人公は書かれる価値のあるものが何もないのだろう。意味がないから書かなくても進んでしまうのだろう。
その主人公の想いはどこにも伝わらないのだろう。
「……あ」
フラフラと歩いていると自分は、入ろうとは全く思っていなかったラノベコーナーにいた。
新刊が出ていたので《歯がない》を取ってみる。
表紙にはかわいい女の子のイラストが描かれていた。
もし、いつか困り果ててしまったら、妄想の世界を妄想し続けて生きていこうかな。……でも、きっと僕は好きであり続けられないだろうな……。第一みんな同じ顔に見えてるし、もうだめかもしれない。
「由比ヶ浜さんをヤンデレ扱いしたけど僕の方がよっぽど病んでるじゃねえかよ!」
女の子に興味が湧いてこないとか、もう末期じゃないか!……ってかそれただのホ○じゃね?
……男の子の心、忘れちゃ、ダメ、絶対。
と言うことはつまり女の子を見て興奮するのは実に正当な行いであり絶対的正義なのですね。分かります。
「だから俺はノーマルだ……」
ノーマル。
ところで特技どころか行動力も皆無な主人公っていたっけ?ちなみに俺はいないんじゃないかなと思っている。
だってそんな奴がいたら物語も興が醒めるだろう。
向上心を必要としなくなった世界なのだから、彼が落ちぶれるのも仕方がないことではあるが。
俺はため息を吐きつつ、本から目を離した。
ところで、本を選ぶとき、
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