第二章 風のアルビオン
第五話 ウェールズ・テューダー
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のだ。いさぎよく……」
しかし、ウェールズが伸ばしてきた手をワルドは跳ね除けた。
「黙っておれ!」
ウェールズはワルドの言葉に驚き、立ち尽くした。ワルドはルイズの手を握る。
ルイズはまるで蛇に睨みつけられたカエルのように動けなくなった。
「ルイズ! 君の才能が僕には必要なんだ!」
「わ、わたしは、そんな才能のあるメイジじゃないわ」
「だから何度も言っている! 自分で気づいていないだけなんだよルイズ!」
ルイズはワルドから離れようとしたが、ワルドの手は、しっかりとルイズの手を握り締め、振りほどくことができない。苦痛に顔を歪めながらルイズは言った。
「そんな結婚、死んでも嫌よ。あなたはわたしをちっともあいしていないじゃない。ただ、あなたは、わたしの中にあるという、在りもしない魔法の才能が欲しいだけよ! ひどい、ひどいわ! そんな理由で結婚しようだなんて。こんな侮辱はないわ!」
ルイズは一刻も早くワルドから離れるために暴れた。それを見かねたウェールズが、ワルドの肩に手を置いて、引き離そうとする。しかし、今度はワルドに突き飛ばされた。
突き飛ばされたウェールズの顔に赤みが走る。ウェールズすぐに立ち上がると、杖を引き抜く。
「くっ、なんたる無礼! なんたる侮辱! 子爵、今すぐにラ・ヴァリエール嬢から手を離したまえ! さもなくば、我の魔法の刃が君を切り裂くぞ!」
ワルドはそこでやっとルイズから手を離し、ルイズにどこまでも優しい笑顔を向ける。しかし、その笑みは嘘に塗り固められていた。
「こうまで僕が言ってもダメかいルイズ? 僕のルイズ?」
ルイズは怒りで震えている。
「いやよ! 誰があなたと結婚なんかするもんですか!」
ワルドは天を仰いだ。
「この旅で、君の気持ちを掴もうと思っていたんだが……君のために……」
両手を広げてワルドは首を振る。
「……こうなってはしかたない。目的の一つは諦めよう」
「目的?」
ルイズは訝しげな顔をして首を傾げる。
ワルドは唇の端をつりあげると、禍々しい笑みを浮かべている。
「そうだ。この旅における僕の目的は三つあった。その二つが達成できただけでも、よしとしなければな」
「達成? 目的? ワルド、一体何を?」
ルイズは言いようのない不安におののきながら尋ねた。心の中で、不安がどんどんと大きくなっていく。
ワルドは右手を掲げると、人差し指を立ててみせた。
「まず一つ目は君だった。ルイズ、君を手に入れることだった。しかし、どうやらこれは果たせないようだ」
「当たり前よ!」
次にワルドは中指を立てた。
「二つ目の目的は、ルイズ、君のポケットに入っている、アンリエッタ
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