暁 〜小説投稿サイト〜
剣の丘に花は咲く 
第二章 風のアルビオン
第五話 ウェールズ・テューダー
[5/14]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

 
 いきなりの展開に、ウェールズは首をかしげた。

「新婦はこの結婚を望まぬのか?」
「そのとおりでございます。お二方には、大変失礼をいたすことになりますが、私はこの結婚を望みません」
 
 ワルドの顔に、さっと朱がさした。ウェールズは困ったように首を傾げると、残念そうにワルドに告げた。
 
「子爵、誠にお気の毒だが、花嫁が望まぬ式をこれ以上続けるわけにはいかぬ」
 
 しかし、ワルドはウェールズに見向きもせずに、ルイズの手を取った。

「まだそんなことを言うのか君は……緊張しているだけなんだろうルイズ。きみが、僕との結婚を拒むわけが……」
「ごめんなさい。ワルド。憧れてた。もしかしたら、恋だったのかもしれない。でも、今は違うわ」

 するとワルドは、目をつり上がらせると、先ほどまでの優しい表情を、冷たくトカゲのような何かを思わせるものに変え、ルイズの肩を掴んだ。
 そして、熱っぽい口調でワルドは叫ぶ。

「世界だ! 世界だルイズ! 僕は世界を手に入れるんだ! そのために君が必要なんだ!」

 豹変したワルドに怯えながら、ルイズは首を振る。

「……なに? なにを言っているのワルド?」
 
 ワルドは両手を広げると、ルイズに詰め寄った。
 
「僕には君が必要なんだ! 君の能力が! 君の力が!」
 
 ワルドの剣幕に、ルイズは恐れをなした。優しかったワルドがこんな顔をして、叫ぶように話すなんて、夢にも思わなかった。ルイズは後ずさる。
 
「ルイズ、いつか言ったことを忘れたか! きみは始祖ブリミルに劣らぬ、優秀なメイジに成長するだろう! 君は自分で気づいていないだけだ! その才能に!」
「ワルド、あなた……」
 
 ルイズの声が、恐怖で震えた。ルイズの知っているワルドではない。何が彼をこんな物言いをする人物に変えたのだろう?





「ま、こんなものか」
 
 刺客が倒れている中、士郎はデルフリンガーを鞘に収めた。
 
「いや〜。いつもながら相棒は信じられない奴だな……メイジ十四人を倒すなんて……相棒?」
 
 唐突に士郎が訝しげな顔をし、左目を手で抑えるのを見たデルフリンガーが、疑問の声を上げた。

「左目が変だ……っまさかこれは」

 ―――使い魔は、主人の目となり、耳となる能力を与えられるわ―――

 士郎が左手のルーンを見ると、武器を握っているわけではないのに光り輝いていた。

 ルイズが言っていたのはこのことか? しかし、なぜ、急に……まさかっ!
 
 士郎は何かに気づくと、ルイズの下にいくため走り始めた。







 ルイズに対するワルドの剣幕を見かねたウェールズが、二人の間に入る。

「子爵……君はフラれた
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ