第二章 風のアルビオン
第五話 ウェールズ・テューダー
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を抱いていただろう。
でも、どうしてだろう、心が踊らない、ただただ切ないだけ。
どうして、こんなに気持ちは沈むのだろう。
滅び行く王国を目にしたから?
愛するものを捨て、望んで死に向かう王子たちを目の当たりにしたから?
……違う。どれも悲しい出来事だったけど、わたしの心をこんなに沈ませたのはそれじゃない……。
士郎が昨日の夜、あんなに幸せそうな顔をして、女の人のことを話した時、どうしてあんなに悲しかったのだろう……?
どうして士郎が「愛していた」と言った時、どうしてあんなにショックを受けたんだろう……?
どうしてわたしは、あの場から逃げ出すように離れて行ったんだろう……?
逃げたかった……?
誰から……?
士郎から……?
わたしが今まで見たことのない顔をして、「愛していた」なんて言う士郎から……?
どうして……?
その理由に気付いた瞬間、ルイズの顔が、火がついたように真っ赤になる。
いつもいつも、士郎に甘えている理由に気付く。
しかし同時に疑問も沸き上がる。本当にそれは……今自分が考えているような気待ちなのだろうか?
わからない……。
でも、確かめたい……。
何故なら初めて感じる気持ちなのだから。
頭を撫でられたとき、抱きしめられたとき、お父様とは違った気持ちになった……。
胸の奥が熱くなって……踊りだしたくなるほどワクワクしたり…雲の上にいるようなふわふわした気持ちに……。
何より、こんなに切ない気持ちになるのだから……。
一方、ルイズが自分の気持ちに気づいた頃、士郎は黒尽くめの服を着た者たちに囲まれていた。
その数実に十四人、その全ての者が杖を持っている。
「貴族派の者達か……なぜ俺を狙う、っということは……迷子の子供の話は罠か」
士郎の言葉に貴族派の刺客は反応することなく、一斉に魔法を放つ。
「ちっ、面倒だな。ここは狭すぎる」
城の天守閣は暴れるには狭すぎ、士郎の動きは制限される。
士郎が囲みの一箇所に突撃し、囲みを突破しようとする。しかし、刺客は魔法を怒涛の如く放ち、士郎の突破を許さない。士郎はただ、向かってくる魔法をよけ、切り払うことしか出来ない。
士郎が途切れることなく降り注ぐ魔法を捌いていると、唐突にデルフリンガーが叫ぶ。
「―――思い出したっ!」
「突然どうしたデルフ?」
「そうか……ガンダールヴか!」
「ん? ああ、例の件か、で、何か思い出したのか?」
「いやぁ、俺は昔、お前に握られてたぜ。ガンダールヴ。でも忘れていた。なにせ、今から六千年も昔の話だ!」
「しかし、この状況で思い出すか……もう少し空気を読んで欲しかったな」
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