暁 〜小説投稿サイト〜
剣の丘に花は咲く 
第二章 風のアルビオン
第五話 ウェールズ・テューダー
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「ぁ…ギーシュの」
 
 その茶色の生き物は、ロングビルの持った宝石に顔を寄せた。

「あなた……ギーシュの使い魔のヴェルダンデじゃない! どうしてここに?」

 ルイズが驚愕の声を上げると、巨大モグラが出てきた穴から、ひょこっとギーシュが顔を出す。

「はあっ……やっと外かい、疲れたよ……」

 土に塗れたギーシュは、呆れた様な顔をした士郎たちに笑いかけた。

「ははっ。さすがヴェルダンデだねっ! それで今どんな状況なんだい?」
 
 ギーシュが穴の中から這い出てくると、ギーシュの後からキュルケたちが顔を出してきた。

「そんな事聞いてる状況じゃないでしょっ! 周りの状況を考えなさいっ! さっさと逃げるわよっ!」
「早く逃げる」
「逃げるってどうやって?」
 
 ルイズが疑問の声を上げると、キュルケがヴェルダンデが掘った穴を指差して言った。

「この穴の先にシルフィードが待っているわ。良く分かんないけど、逃げるには混乱している今の内よ」
「早く」
 

 ロングビルとルイズが慌てて穴の中に入っていくのを見た士郎は、血の海に沈む、事切れたウェールズに近づく。
 軽く目を閉じ黙祷した士郎は、ウェールズの嵌めた大粒のルビー、アルビオン王家に伝わる風のルビーを外すと、それをポケットに収めた。

「ウェールズ……せめてあなたの思いだけでも……」

 士郎はそう呟くと、ルイズたちが潜っていった穴に駆け戻った。




 誰もいなくなった礼拝堂に、寂しげな風が吹き抜ける……四千年続くアルビオン王国……その終わりを悲しむように……。


 


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