第二章 風のアルビオン
第五話 ウェールズ・テューダー
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後ろから掛けられると共に、背中に感じる柔らかい感触に士郎が背後を振り返ると、そこにはフードを被ったロングビルがいた。
「……自分の主に心配かけさせないようにしな」
士郎の背中をロングビルがきつく抱きしめていた。ロングビルは顔を上げると、潤んだ瞳で士郎を見上げていた。
「あんた今どんな顔してるのかわかってるのかい……? なんなんだいその顔……親とはぐれた子供じゃないんだから」
言い寄るロングビルに、どこか戸惑った様子で見下ろす士郎。ロングビルは震える体で士郎をさらにきつく抱きしめる。
「自分じゃ分からないんだがな」
頭を掻きながら首を傾ける士郎の頬を両手で軽く引っ張ったロングビルは、軽くステップするように後ろに飛んだ。
「だから……馬鹿なんだよ」
周りに聞こえないほど小さな文句を、ロングビルは呟く。
突然のロングビルの登場に、ルイズは士郎とロングビルの掛け合いを聞くと、訝しげな顔を士郎達に向けた。
「……そう言えばさっきからミス・ロングビルと妙に仲いいけど……ほんとにどんな関係なのよ……」
ルイズは士郎とロングビルをジト目で見つめる。
ロングビルは顔を真っ赤にさせて手と首を一緒に勢い良く振ると、慌てたようにルイズに言い訳を始めた。
「べっ、別に特別な理由は無いよっ! しっシロウの様子があまりにも……その……」
冷や汗をだらだらと流しながら顔を背けるロングビルを訝しげに見つめていたが、ルイズは微かにため息をつくとロングビルに改めて問う。
「まあいいわ、でもどうしてこんなところにいるのですか? タバサとギーシュはどうしましたか?」
「……キュルケは自然にスルーか」
ルイズの質問に小声で突っ込む士郎も自然に無視し、ルイズはロングビルの答えを待つ。
ロングビルは、ルイズの質問に被っていたフードを外す。
「えっ? ああ。私はここに少し詳しかったので、偵察替わりに先にここに来たんですよ。ミス・ツェルプストーたちは、……ああ、これこれ」
ロングビルは服の中から何かを取り出すと、それを士郎たちに見せた。
「宝石?」
「これがどうかしたのか?」
ロングビルは服の中から取り出した宝石を士郎たちに苦笑いを向ける。
「ミス・ツェルプストーたちはこの臭いを辿って来ますよ」
「宝石の?」
「臭い?」
ロングビルはルイズと士郎の言葉に苦笑すると、ルイズたちの疑問に答えようと口を開こうとした瞬間……。
ぼこっと、ロングビルの後ろの地面が盛り上がった。
「何っ?」
「まさか……」
「来たようね」
その場にいた全員が、盛り上がった地面を見つめる中、ボコッと床石が割れ、茶色の生き物が顔を出した。
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