第二章 風のアルビオン
第五話 ウェールズ・テューダー
[12/14]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
の力を使っていなかった……?」
ワルドが信じられない、信じたくない考えを抱いた瞬間、凄まじいほどの悪寒と恐怖を感じ、突然立ち上がると、船の上から礼拝堂を見下ろした。
―――見えているぞ―――
「ヒッ!?」
その時だった、士郎の声が聞こえたのは。
船から礼拝堂まで優に三リーグ以上あるにもかかわらず、ワルドにはまるで、それが耳元で囁かれたような気がした。
感じる危機に命じられるまま、ワルドは反射的に船から飛び降りた。
士郎は感情の見えない顔でその歪な矢を弓につがえると、見えない何かを見詰めるように目を細め、何事か呟くと矢を放った。
――これは少しばかりきついぞ――
「偽・螺旋剣」
「……えっ……何コレ……?」
ルイズは感情の抜けた声でポツリと漏らす。
ルイズの目の前には信じられない光景が広がっていた。
ルイズの視線の先には、礼拝堂の天井を士郎がデルフリンガーで破壊したことから、“レコン・キスタ”の艦隊が並ぶ空が見えていたはずだった。
しかし、その視線の先には何もなかった、全てなくなっていた、ルイズの見える範囲の全てが消えていた。
士郎が矢を放った瞬間、まず礼拝堂の天井が消えた、天井が消えたと思った次の瞬間にはレコン・キスタの艦隊が吹き飛ばされた。
まるで強風に吹き飛ばされる枯れ葉のように、軽々と吹き飛ぶ艦隊の様子に、ルイズはただただ呆然と恐怖に震えていた。
こ……怖い……シロウ……あなたは一体……なに……?
「シロウ……ぁ……?」
しかし、空を見上げる士郎の瞳に何かを感じたルイズは、血と埃、瓦礫で汚れている床を震える体を無理やり動かしてでも、士郎に近づいていく。
「……シ……ロウ」
何故かは分からない……ただ、自身が命ずるままに士郎に歩み寄る。
信じられない力を見せた士郎に恐怖を感じるが、それを超える使命感にも似た予感に突き動かされたルイズは、士郎にゆっくりとだが、確実に近づいていく。
何……で……
「ぁ……」
ああ……分かった……
何でこんなに、胸が痛むのか……
何でシロウの、傍にいたいのか……
何で、こんなに、悲しい、のか……
「……ルイズ」
「シロウ」
士郎がルイズを見る。
その瞳は……
「シロウ……泣かないで」
悲哀に満ちていた。
「……泣いて、ないさ」
「……ぅん……そうだね」
微かな笑みを浮かべる士郎。
すると、
「馬鹿だね、あんた……」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ