第二章 風のアルビオン
第五話 ウェールズ・テューダー
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せ、戦の準備に駆けつけるつもりであった。
ウェールズは皇太子の礼装に身を包んでいる。
明るい紫のマントは、王族の象徴、そしてかぶった帽子には、アルビオン王家の象徴である七色の羽。
扉が開き、ルイズとワルドが現れた。ルイズは呆然と突っ立っている。ワルドに促され、ウェールズの前に歩み寄る。
ルイズは戸惑っていた。今朝方早く、いきなりワルドに起こされたと思うと、何の説明も無くここまで連れてこられたのだった。
昨日の夜、士郎の言葉にショックを感じたルイズは、部屋に戻るなりベッドに潜り込んだ。なぜ士郎のあの言葉にここまで心が乱されるのか分からず、混乱の中いつの間にか眠りについたと思ったら、朝早くにワルドに起こされ、ここまで説明もないまま連れて来られたのだ。
ルイズは昨日の士郎の言葉が気になり頭が一杯であったため、ワルドの後ろを深く考えず、半分眠ったような頭でここまでやってきていたのだった。
ワルドはウェールズの前に着くと、そんなルイズに「今から結婚式をするんだ」と言って、アルビオン王家から借り受けた、新婦の冠をルイズの頭にのせた。新婦の冠は、魔法の力で永久に枯れぬ花があしらわれ、なんとも美しく、清楚なつくりであった。
そしてワルドはルイズの黒いマントを外し、やはりアルビオン王家から借り受けた純白のマントをまとわせる。新婦しか身につけることを許されぬ、乙女のマントであった。
しかし、そのようにワルドの手によって着飾られても、ルイズはあまりのことで反応できなかった。ワルドはそんなルイズの様子を、肯定の意思表示と受け取った。
始祖ブリミルの像の前に立ったウェールズの前で、ルイズと並び、ワルドは一礼する。ワルドの格好は、いつもの魔法衛士隊の制服である。
「では、式を始める」
王子の声が、ルイズの耳に届く。しかし、混乱の渦にまかれるルイズにはその言葉は、ハッキリと聞こえなかった。
「新郎、子爵ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。汝は始祖ブリミルの名において、このものを敬い、愛し、そして妻とすることを誓いますか」
ワルドは重々しく頷き、杖を握った左手を胸の前に置いた。
「誓います」
ウェールズはにこりと笑って頷き、今度はルイズに視線を移す。
「新婦、ラ・ヴァリエール公爵三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール……」
朗々と、ウェールズが誓いのための詔を読みあげる。
ここまで来て、やっとルイズは今が、結婚式の最中だということに気付いた。相手は憧れていた頼もしいワルド。二人の父が交わした、結婚の約束。幼い心の中、ぼんやりと想像していた未来。それが今、現実のものになろうとしている。
ワルドの事は嫌いじゃない。少なくとも、好意
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