暁 〜小説投稿サイト〜
剣の丘に花は咲く 
第二章 風のアルビオン
第五話 ウェールズ・テューダー
[1/14]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 翌朝、士郎は朝日が昇る前に起きて城内を回っていると、すでにニューカッスルから疎開する人たちが歩き回っていた。そんな中、デルフリンガーがいきなり話しかけてきた。

「そう言えば相棒、ちょっと聞きてんだが」
「なんだ?」
「ここに来る前にさ、学園であの貴族の兄ちゃんが相棒のこと“ガンダールヴ”って言っていたよな?」
 
 突然話しかけてきたデルフリンガーに訝しげな顔をするも、士郎は頷きながら答える。
 
「ああ。なんだお前、何か心当たりがあるのか?」
「んまぁ。そうだな……ずいぶん昔のことなんだが、何か聞き覚えがあんだよなぁ……」
「なんだ、はっきりしないな?」

 唸るような声を上げるデルフリンガーに、士郎は苦笑していると、必死の形相で走り回る女性の姿に気が付く。

「マルクっ〜! マルク〜! どこにいるの〜! マルク〜!」
「どうしましたか?」

 士郎が女性に話しかけると、女性は勢い良く振り向き詰め寄ってくる。

「私の、私の息子のマルクが! ここで待っているよう言っていたのに! 居なくなっているんです!」
「何処へ行ったか心当たりはありませんか?」
「心当たりは……いいえまさか……でも」
「心当たりがあるんですね? そこはどこなんですか?」
 
 士郎が尋ねると、母親は首を振る。

「心当たりはあるにはあるんですが……こんな時に行くはずがないんですっ。だってあそこは……」
「どこなんですか?」

 首を振るばかりで、場所を言わない母親に士郎が再度尋ねると、母親はおずおずと顔を上げた。
 
「この城の一番上です、あの子はあそこから見える景色が大好きだったんです……でもこんな時に行くはずがないんですっ……でも、もうそこしか心当たりが……」
 
 自分の考えを否定するように首を振る母親の肩に手を置くと、士郎は力強く頷く。

「わかりました。私がそこを探してみますので、あなたはここにいてください。もしかしたら息子さんが戻ってくるかもしれませんから」
「あっ、ありがとうございます!」

 勢い良く頭を下げ、お礼を言う母親に軽く笑いかけると、士郎はすぐに踵を返すと走り始めた。



 士郎の姿が見えなくなると、母親は無表情になる。そして、いつの間にか母親……女の背後に立っていた男に命令する。

「作戦の第一段階は終了。対象が到着次第―――囲んで殺せ」
「了解」





 士郎が迷子の子供を探すため走り出した頃、始祖ブリミルの像が置かれた礼拝堂で、ウェールズは新郎と新婦の登場を待っていた。
 昨日、ワルドから頼まれた、ワルドとルイズの結婚式のため、急遽準備したのだった。
 周りには他の人間はいない。皆、戦の準備で忙しいのであった。ウェールズも、すぐに式を終わら
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ