第二章 風のアルビオン
第五話 ウェールズ・テューダー
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翌朝、士郎は朝日が昇る前に起きて城内を回っていると、すでにニューカッスルから疎開する人たちが歩き回っていた。そんな中、デルフリンガーがいきなり話しかけてきた。
「そう言えば相棒、ちょっと聞きてんだが」
「なんだ?」
「ここに来る前にさ、学園であの貴族の兄ちゃんが相棒のこと“ガンダールヴ”って言っていたよな?」
突然話しかけてきたデルフリンガーに訝しげな顔をするも、士郎は頷きながら答える。
「ああ。なんだお前、何か心当たりがあるのか?」
「んまぁ。そうだな……ずいぶん昔のことなんだが、何か聞き覚えがあんだよなぁ……」
「なんだ、はっきりしないな?」
唸るような声を上げるデルフリンガーに、士郎は苦笑していると、必死の形相で走り回る女性の姿に気が付く。
「マルクっ〜! マルク〜! どこにいるの〜! マルク〜!」
「どうしましたか?」
士郎が女性に話しかけると、女性は勢い良く振り向き詰め寄ってくる。
「私の、私の息子のマルクが! ここで待っているよう言っていたのに! 居なくなっているんです!」
「何処へ行ったか心当たりはありませんか?」
「心当たりは……いいえまさか……でも」
「心当たりがあるんですね? そこはどこなんですか?」
士郎が尋ねると、母親は首を振る。
「心当たりはあるにはあるんですが……こんな時に行くはずがないんですっ。だってあそこは……」
「どこなんですか?」
首を振るばかりで、場所を言わない母親に士郎が再度尋ねると、母親はおずおずと顔を上げた。
「この城の一番上です、あの子はあそこから見える景色が大好きだったんです……でもこんな時に行くはずがないんですっ……でも、もうそこしか心当たりが……」
自分の考えを否定するように首を振る母親の肩に手を置くと、士郎は力強く頷く。
「わかりました。私がそこを探してみますので、あなたはここにいてください。もしかしたら息子さんが戻ってくるかもしれませんから」
「あっ、ありがとうございます!」
勢い良く頭を下げ、お礼を言う母親に軽く笑いかけると、士郎はすぐに踵を返すと走り始めた。
士郎の姿が見えなくなると、母親は無表情になる。そして、いつの間にか母親……女の背後に立っていた男に命令する。
「作戦の第一段階は終了。対象が到着次第―――囲んで殺せ」
「了解」
士郎が迷子の子供を探すため走り出した頃、始祖ブリミルの像が置かれた礼拝堂で、ウェールズは新郎と新婦の登場を待っていた。
昨日、ワルドから頼まれた、ワルドとルイズの結婚式のため、急遽準備したのだった。
周りには他の人間はいない。皆、戦の準備で忙しいのであった。ウェールズも、すぐに式を終わら
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