第七十九話 アンタレスの劫火
[3/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
強く結びつけた。味方の近くにいたザフトの軍人の多くはその操縦技術や機体の魅せ方の上手さに見惚れ、状況によっては味方を撃つかもしれないという緊張を自然とほぐれさせる行為となる。
「まさに道化だな――――しかし、だからこそ、こういった演出は有用だ」
自身すらも利用して計画を実行する。当然の行動であり、それはあっさりと成功していた。そして、この過剰とも言える演出には他の役割も果たされる。
「精々、私とこの機体に皆惹きつけられていたまえ。君たちが私という存在に注意すればするほど、影は目立たなく、そしてより強大なものとなる」
猛禽のように鋭い目つきをして議長は獲物に狙いを定める。最初の狙いは白亜の不沈艦――――アークエンジェルとそのMS。
「さあ、キラ・ヤマト――――まずは君の可能性を見せてもらおう!」
◇
「グラディス艦長!戦闘が始まったというのは本当ですか!?」
アスランが焦った様子でミネルバの艦橋に立ち入る。現在ミネルバ側の陣営は立場が非常に危うい所にあり、一触即発とまではいかないが状況次第では同じザフトで争うことになるような状態であった。しかし、それもまだ先の話であり今はあくまでも両者の立場は組織内の右翼と左翼に近いようなものであった筈だ。
にもかかわらず戦闘が始まった。それが意味するところは非常に大きな混乱が生まれ、互いの戦闘は血で血を洗う泥沼の戦いになる可能性を秘めている。クラウ・ハーケンなどは『このまま事態が悪化すればまさにエゥーゴとティターンズになるね』などとメサイア内部で一人そう発言していることから現状の危うさは理解できるだろう。
「そうね……でも、戦闘を始めたのは私達ではないわ」
「では、地球軍かロゴスの残党が?」
少しだけ安堵した様子を見せながらアスランは可能性としてありえる地球連合関係なのかを尋ねる。しかし、これに対してもタリア・グラディスは首を横に振った。
「貴方には言い辛いけど、アークエンジェルとそれに属した部隊みたい……全く、彼らはまた正義の味方とでも言いたいのかしら?」
タリアとしても苦々しい思い出もある為、少々皮肉を込めたようにアスランに棘のある言い方をする。アスランは苦虫を噛み潰したような表情となり、何を話せばよいのか迷う。
「……援護は、無理ですよね」
「一応、どちらに対して――――と返してあげるわ。貴方も現状を理解できていないわけではないでしょう?私達の方から動くのは無謀よ。私達は軍人で、彼らの様に正義の味方をしてるわけでも、味方殺しをしたいわけでもないの。わかるでしょう?」
アスランも理解は出来ている。今の情勢でどちらに加勢するにも不安定な状況だ。だが、それを眺めていることでしか出来ない現状にア
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ