心の鎧
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カナのツッコミも尤もだが、グレイは気にせずエルザに声を掛ける。
「オイ、お前」
・・・まぁ、最初の発言としては少し、いや、かなり乱暴だが。
名前ではなく『お前』と言われた事が嫌だったのか、それとも話す気はないのか、エルザは答えない。
答えるどころか、グレイと目すら合わせない。
その様子にイラッとしたグレイは―――
「聞いてんのかよ鎧女ァ!」
「くっ!」
エルザの座っていた椅子の足を自分側に蹴とばした。
その結果、エルザは見事に尻餅をつく。
「・・・何をする」
グレイの『オイ、お前』もそうだが、エルザの第一声もいかがなものか。
「ここは魔導士のギルドだ。鎧なんか着てんじゃねーよ」
筋が通っていると言われればそんな気がしなくもないグレイの言葉に、エルザは特に怒る事もせず、服の埃を払いながら呟く。
「そういう貴様は何か着たらどうだ?ここは変態のギルドか?」
「・・・!」
そう。
この時のグレイは、ウルの修行で造形魔法と共に得てしまった脱ぎ癖で、服を脱いでいた。
それを聞いたギルドのメンバーは、一気に大笑いする。
「テメェ・・・」
「私に構うな」
ただ一言、エルザは告げた。
「・・・魔導士のギルドだけど僕、学生服着てるよ?」
その様子を見ていた当時11歳のルーは、困ったように首を傾げた。
そして当時9歳のティアは、そんなグレイとエルザを見て、溜息と共によく通る声で呟く。
「バッカみたい・・・」
それから8年、グレイは炎に包まれていた。
・・・こう書くのも変だが、その通りなので仕方がない。
氷の魔導士であるグレイにとって炎の中で魔法を使うなど、ルーに一昨日の夕飯を思い出させるとの同じくらい無理な事だ(ちなみにルーは昨日の夕飯でさえ曖昧だったりする)。
「グレイ・・・」
シモンが呟く。
この状態でグレイは戦えない。シモンも怪我をしているし、ハッピーは戦う魔法が使えない。
シモンはゆっくりと、自分達の敗北を考えた。
―――――――そこに、その紅蓮の炎の中に。
―――――――綺麗に映える、深海色の閃光を見るまでは。
「っ!」
閃光は煌めく。
その青い髪と瞳を煌めかせ、飛翔し、自ら紅蓮へ飛び込む。
一瞬の躊躇いもなく、誰かの為でもなく、ただ、己の純粋な信念によって。
「確かに・・・炎の中で氷は造れない」
紅蓮の中に、妖しいまでに煌めく深海色。
その光は殺気に満ちていて、それでいて妖艶で、美しく、色褪せない。
「だけど、アンタ達は大切な事を忘れている
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