一部咲キ
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注がれ、いずれその中で緩慢に腐っていくのだろう。
転校生のこともそう。自分には関係ないのだと再び眠気が襲ってくる。興味をもてたのは一瞬。ほんの小さな小石でしかない。ゆらりゆらりと水面で揺れる。眠りの揺りかごを揺らしていく。
教師の声が聞こえる。
「ほら入れ」
「失礼します」
声と共に誰かが入ってくる。
揺り篭の中から少女――宮永咲が視線を飛ばす。
『お前だけ興味なくて眠そうにしていたから記憶に残ってた』
暫く後に言われた言葉。それが話しかけられた理由。だからきっと偶然、だったのだろう。
崖の上から落ちた小石が大岩を動かすように。水面に投げた小石が映る月を揺らし静止した水の時を動かす。
きっと偶然で、そして必然だったのだろう。
それは分水嶺。砕けた「地」を取り戻す為のもう一つの分水嶺へと導いてくれる。手を引っ張ってくれる彼との出会い。「空」を見るきっかけをくれた出会い。
入ってきたのは男だった。
男性的に整っていながら思春期特有の、大人へと入る前の中性さをどこか残した容姿。人懐っこそうな表情を浮かべた金髪の少年。
まだ慣れていないのだろう制服との僅かなミスマッチさを出しながら彼は教壇に立ち口を開く。
少女は揺り篭の中からその少年を見る。
「――から転校してきました。須賀京太郎といいます。よろしく!」
眠り姫が今、目覚める。
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