12話 タケ
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さなければならない。ボクは当たり前の事をやっただけだ。罪悪感を感じる必要はない。だから、心は動かない。
荒れていた息が整うと、ボクはラウネシアの方に向かって歩き出した。亡蟲について聞かなければならない。知るべき事が山ほどあった。
不安そうな感情を立ち昇らせるラウネシアの前に辿り着くと、彼女は安心したように微笑んだ。
『無事だったのですね』
「墜落した亡蟲の生き残りだったようです。手負いだった為、一方的に打撃を与える事ができました」
ラウネシアの双眸が、血だらけのボクの服に向けられる。
「ラウネシア。死骸はどうしますか? 放っておけば養分になりそうだけど」
『ええ、亡蟲の死骸はそのままで構いません。そのうち分解されていきます』
ボクは迷った後、少しだけこの森に踏み込む。
「この辺りに川や湖はありませんか? 全身の血を落としたいんですが」
『水、ですか。この周囲に水源はありません。森全体が、土が水をよく吸収するためです。しかし、私自ら水を提供する事ができます』
ラウネシアの右手が、そっと唇を指差す。妙に艶かしい仕草だった。
『土から吸い上げた水をろ過し、それを私の口から移す事ができます。よろしければ、どうぞ』
予想外の言葉に、身体が止まる。
「……あの、ラウネシアはもしかして、そうやって人の生気を吸う訳じゃないですよね?」
『まさか。冗談です。私の右側の樹幹にコブがあるのが見えますか? そこに穴を開けてみてください。貯蓄している水が出ます。そこに貯まっている水は全て差し上げます』
からかうように笑うラウネシア。どうやらユーモアの感覚があるらしい。
中に水があるというのは、竹水のようなものなのだろうか。一般的にコブというのものは樹木の病気などの症状として挙がる為、あまりそこの水を飲む気にはならないのだけど。
「穴って、本当に良いんですか?」
『ええ。カナメ。私は貴方に好感を抱いているのですよ。貴方はその手でシメコロシ植物を駆除し、亡蟲の個体を打ち倒した。原型主たる私が創造したこの森において、私に味方する別の種、というのはいません。貴方は私にとって初めての協力者になった。食料と水は私が責任を持って提供しましょう』
その代わり、とラウネシアの思考が続く。
『私の手入れを出来れば続けて欲しいのです。理性的な共生、というわけです。いかがですか?』
ボクはその提案を、迷いなく受け入れた。
食料、そして拠点の確保に成功する上に情報源にもなるラウネシア。
断る要素が見つからなかった。
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