11話 スギ
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『亡蟲、航空部隊を展開しています。カナメ、広い場所には出ないようにしてください』
航空部隊。想定外の単語。
亡蟲と呼ばれるそれは、それほど高度な文明を築いているのだろうか。
『私に取り付いていた寄生植物たちも、元より敵の航空部隊がまき散らしたものです。その成果を確認する事が敵の戦術目標なのでしょう』
遠くから響く太鼓の音は止む様子がない。この音によって指揮を執っているのだろうか。規則的な重低音が森を揺らす。
不意に、太鼓の音とは違う破裂音のようなものが聞こえた。遠くから聞こえるそれは、徐々にこちらに近づいてくるように大きくなり、複数の音が重なり始める。
頭上からだ。それに気づいた時、上方の林冠、枝葉が茂る周辺が次々と弾け、乾いた音が響く。
「ラウネシア! 上です! 攻撃されています!」
『いいえ、逆です。攻撃しているのです』
ラウネシアは落ち着き払った様子で答える。
よく見ると、攻撃を受けて樹冠が次々と弾けているわけではなかった。自発的に弾けた実が散弾となって上空に放たれていく。
対空砲。
迎撃を開始した植物たちに対向するように、上空から羽音が響いた。枝葉の間から、蜻蛉(とんぼ)のような生物が確認できた。 最低でも十を超える機影。そして、その蜻蛉の上には人型の何かが跨っている。以前に遭遇した豚男とそれは酷似していた。
「あれが、亡蟲……」
次々と炸裂する散弾によって、直撃を受けた蜻蛉型の飛行生物が墜落していく。蜻蛉たちは数を減らしながらも、ラウネシアの上空を旋回し、接近を試みようと降下を繰り返す。
不意に太鼓の音が止まった。散弾の雨を避けるように蜻蛉たちは次々と高度を上げて離脱していく。
『撤退命令が出たようですね』
呆気ない。
そう思ったが、あの亡蟲たちは初めからラウネシアの状態を偵察するのが目的だったのだから、既に目的は果たしたと考えるべきか。
それに、ラウネシア上空での戦闘は短時間だったが、ここに来るまでに対空砲の影響を受けて、かなりの数を減らしていたはずだ。元々、深部まで到達できるようにそれなりの戦力を投じていたのだろう。向こうの損耗はボクが考えるよりも遥かに大きいものなのかもしれない。
不意に、がさ、と音がした。木立の向こう。草むらの陰から豚男の姿が見えた。ボクが向こうを発見すると同時に、豚男もこちらに気づいたように足を止める。
背筋が凍った。
豚男の咆哮。
『カナメ!』
危機感を伴ったラウネシアの感情波。
豚男がボクめがけて突撃してくる。右足を負傷しているのか、足を引きずるような不格好な走り方。武器も持たず、愚直にぼくに向かって地を駆ける。
無手とはいえ、向こうは二メートルの体格を持つ生物。ボクはすぐに身を翻すと、森の中を駆けた。
この森が保持する攻撃
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