8話 シメコロシノキ
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外周上のシメコロシノキの根を全て断った時には既に日が傾き始めていた。寄生植物に至っては寄生場所が高い為、処理が難しい。それにこうした寄生植物は往々にして生命力が高い。例えちぎったとしても、その一部が残ってしまえばそこから再生してしまう。故に処理は諦めるしかなかった。シメコロシノキに至っても恐らくは早い内に地面を目指して根を伸ばし始めるだろう。それまでに切断を続け、完全に死滅するのを待つしかない。
「一応の処理は終わりました。一帯の養分を全て奪われる事はこれでないはずです」
ぐったりとしたままのアルラウネに報告すると、彼女はゆっくりとボクを見つめてから、微かに笑った気がした。そして、彼女の腕がゆっくりと上へ向けられる。釣られるようにして頭上を見上げると、黄色い果実が降ってくるところだった。すぐ隣に落下し、実の一部が潰れる。拾うと、甘い香りがした。
「えっと、食べていいんですか?」
一応尋ねると、肯定するように彼女は頷いた。手の中の果実を見つめた後、割れた部分を少しだけ舐めてみる。甘い。途端に空腹感が刺激され、ボクは皮を剥くとそのまま勢いよく頬張った。丸一日何も食べていなかったせいか、果汁が口の中であふれた瞬間、まさに頬が落ちるような感覚に陥った。
あっという間に食べつくし、一息つく。桃のような甘さだった。品種改良されていない野生の味でこれだけ人間が食べやすいのは珍しい。
「美味しかったです。ありがとう」
お礼の言葉を述べると、アルラウネはそのまま目を閉じてぐったりとした様子を見せる。日没が近い為、休眠状態に入ったのだろうか。
植物の多くは、昼と夜を正しく理解している場合が多い。アイリスなどは赤色光によって昼であることを理解し、夕陽の遠赤色光によって夜の訪れを知り、花を閉じる。光を知覚するための光受容体を保持しているのだ。このアルラウネもそれと同様にエネルギーを節約するために恐らくは夜間活動に切り替えるのだろう。
空が暗くなっていく。ボクはアルラウネの大きな樹木の下に寄り添うと、身体を丸めて横になった。そして、ぐったりとした様子のアルラウネを見上げる。
何故、この樹木、アルラウネは人型の擬態をしているのだろう。あるいは、人が樹木のように進化して、こうなったのだろうか。人と同様に聴覚や視覚を持ち、その身体も動く事ができるようだった。まるで、人そのもののように。
動く植物、というものは意外と多い。例えばオジギソウ。触ればお辞儀するように素早く葉を閉じてしまう。これは虫などの食害から身を守る為だ。この特性については遥か昔から研究がなされ、筋肉がないにも関わらずどうやって機敏な動きを可能とするのかが長い間謎だった。その答えはシンプルで、電気刺激によって触れた事を知らせると、葉の中の水圧をコントロールして動かすのだ。このように内部の
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