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樹界の王
7話 アルラウネ
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きりと確認できる距離まで接近する。
 綺麗な女の人だった。すらりとした体躯。鼻筋の整った人形じみた顔。
 そして、気がつく。肌が人のそれではない。女の姿をしているが、まるで木質化したような見た目。そして、膝下が大樹と同化し、まるでそこから生えるように存在している。
 アルラウネ、と呼ばれる怪物が真っ先に頭に浮かんだ。ゲームで見たことがある、植物性の怪物。伝承上の怪物から徐々に外れた架空の存在。
 まさか、という思いと、どこか納得するような感覚が綯い交ぜになった。
 この森林における今までの植物たちを思い返せば、こんなものが奥地にいたとしても不思議ではないように思えた。
「……聞こえますか?」
 もう一度問いかけると、女の顔が僅かに動いた。声の主であるボクを特定しようとするかのように、その瞳がゆっくりと持ち上がる。
 吸い込まれるような瞳だった。若竹色の、透明な双眸。それがボクに向けられる。
 驚きの感情が伝わってくる。そこに敵対心は見られない。
 それから、苦痛の感情。この女の形をした何か、仮にアルラウネと名付けるそれは、何かに苦しんでいるようだった。
 ふと、大樹を見上げる。その巨大な大樹全体を締め付けるように蔦が絡まっていた。
 ――シメコロシノキ。
 全ての植物が、土の中で発芽するわけではない。鳥類によってばら撒かれる種は、土に届かず樹木の枝や幹の割れ目に入る事も多い。このシメコロシノキは別の植物の幹の割れ目などに入るとそのまま発芽し、地面目指して素早く根を伸ばすと、それから宿主(しゅくしゅ)の幹に絡みついて、幹全体を包み込んでいく。そのまま宿主の成長を抑えつけ、周囲一帯の養分を奪い、そして宿主に絡みついて上へ伸びる事によって宿主の樹冠、つまり葉がなる部分を覆うようにして自身の葉を茂らせ、光を独占する。こうしてあらゆる栄養分を奪われた宿主が死に至る事例も存在する。
 目の前のアルラウネに絡みつくそれは、シメコロシノキに酷似していた。それに加えて、アルラウネの樹幹に花が点在しているのが見えた。ネナシカズラか。
 ネナシカズラ。名前の通り、根が存在しない。葉も退化して葉緑素がない為に自分自身で光合成をすることができない。根によって水分を取り込む事も、光合成によってエネルギーを作り出す事もできない植物。ならば、どうやってそれは成長するのか。答えは簡単で、他の植物から奪うのだ。寄生根と呼ばれる突起を他植物の維管束の中に突き刺し、そこから養分を直接奪う寄生植物の一つだ。このネナシカズラは奪った養分で花を咲かせ、同時に宿所を死に至らせる事も多々ある。樹幹に見られる花は、そのネナシカズラと同系統の寄生植物に見える。通常は高木に寄生することはないが、この森特有の進化を遂げているのだろう。
 シメコロシ植物と寄生植物。その二つの存在がこの
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