6話 ムシトリスミレ
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情が胸の奥で疼く。
未知のものに対する畏怖か、遙か高位の存在に対する畏敬か。あるいは、両方か。ボク自身よくわからない感情が、胸の奥で渦巻いて収まらない。
「ねえ、カナメ。どれだけ綺麗な言葉で飾っても、世界の本質は変わらないんだよ。私達はね、より多くの人が食べられるはずだった穀物を大量に浪費して作り上げた極僅かの肉を嬉々として食べるんだ。食事の在り方には、弱者と強者が浮き彫りになる。そして誰もがそれを疑問に思わない。でも、社会的、あるいは文化的には弱肉強食を認める事をタブーとする流れがある。この差異は一体どこからやってくるかわかるかい?」
いつか、幼馴染の由香はそう言った。
「それは、支配としての形態だからだよ。弱者を弱者のままコントロールする為の詭弁だ。全ては支配の為の幻なんだよ、カナメ。実につまらないと思わないか」
由香は全てを見下すかのような冷たい瞳でそう言っていた。そして、その瞳には憎悪にも似た激しい炎が宿っていた。
彼女の言う幻は消え去り、目の前には単純な力によって成り立つ原始的な世界が広がっている。
奇妙な高揚感があった。
全てがとてもクリアに見えた。
そして、気づく。ボクはこの森に深く魅入られているのだと。
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