暁 〜小説投稿サイト〜
炎髪灼眼の討ち手と錬鉄の魔術師
”狩人”フリアグネ編
五章 「紅世」
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思うが、思い出すだけで気分が悪くなる。

 生きながらに焼かれていく人々。瓦礫に押し潰され、苦しみながら死んでいく人々。自分の命を省みず我が子を救って欲しいと懇願する親子。
 そして、それらを見捨てて、歩き続ける自分。誰かを救う力を持たず、助けを求める声を無視し、全てを犠牲にした。誰かを犠牲にしたのだから、自分は生きなければならないと思った。
 しかし、自分を救う事も出来ず、結局、切嗣に命を救われた。

 あれから、実際に正義の味方の真似毎をしている時も、あの光景が、あの時の人々の眼が、常に俺を責め続ける。遠坂には、気負い過ぎるな、と言われたけどこればかりはどうしようもない。
 そんな俺を他所に、シャナは気楽そうに頷いた。
「そうよ。それで、それぞれの目的とかの為に、その力を『自在』に操って不思議を起こしたり、下僕を作ったりするわけ」
 欲望のままに行動する連中程、危険な者はいない。己の快楽の為に、奴等は平気で他人を犠牲にする。
 無論、口には出さない。あまり過激な事をいうと、逆に危険な思想の持ち主だと言われかねないからな。
「この世の理から外れた起こるはずのない現象や、要るはずのない存在。それらを生み出すための力の乱獲が、この世と『紅世』との、両界全体のバランスを崩すやも知れぬというのに……。まさしく、愚者の遊戯だな」
 アラストールが物騒な話で締める。
「そのバランスを崩さない為に、乱獲者と戦うのがフレイムヘイズか……」
 全く、ご大層なものだ。均衡を崩さない為に戦う存在ときたか。
 アラストールの表現が間違っているとは言えないが、同時にどこか彼等を認める事が出来ない自分も居た。
 アラストールの弁から察するに、彼は世界の均衡が崩れつつある事態を憂いでいる様に感じれる。だが、人間が実際に消えて―――、いや死んでいっている事には何も触れていない。
 要するに、少数を切り捨ててより大きな数を守る。そういった思考回路なのだろう。あくまで俺の憶測でしかないが、元より『その様な思考をしていたかもしれない』この俺自身にはなんとなく、そう感じられるのだ。

 まぁ、その行動自体は間違った物じゃない。俺だって、その選択を迫られる時が多々あったからな。
 自分の行為を全て正しい物だと胸を張れる自信は未だにない。
「ひとつ質問なんだけど。その『存在の力』は他の物からでも危険だろうけど、人間以外の存在からじゃ駄目なのか?」
「そうだな。我々と近い、強く深い意思の存在であればこそ、力を得る意味がある。有象無象の物だと、返って薄められてしまうのだ」
 同様の力だが、性質の様な物があるのだろうか? オイルを混ぜ合わせると、エンジンに悪影響が出る様な感じで。
 なんだかよく分からないが、色々と面倒な力だというのは嫌というほど分かった。

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