”狩人”フリアグネ編
四章 「名も無き少女」
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からこそ、人は己を偽るときに偽名を使う。それが、自分自身という存在を最も偽れる方法だからだ。
しかし、名前の無い少女は自らの行為だけが、存在を証明出来る唯一の方法になる。それは、もはや道具も同然の存在だと言えよう。
――――それは、非常に脆い存在である。
行為のみが存在の証明ならば、その行為を否定された時、その人間はどうなる。
それは、存在を否定されるのと同意であると言ってもいいだろう。
「ただ……、他のフレイムヘイズと区別するために“『贄殿遮那』の”って付けて、呼ばせてはいるわ」
数瞬の沈黙を経て、少女は言う。
「―――ニエトノノシャナ?」
何かの暗号か? 偉く古めかしい響きの単語だが……、称号か何かなのだろうか。どちらにせよ、人の名前ではない。ただの記号に近い物だ。
なんだそれは、と付け加えて少女に聞いてみた。
「私が持ってる大太刀の銘よ」
銘を机に指で書いて見せてきた。あぁ、ブンブンと軽々しく振り回してたあの大太刀の事か。
中途に解析をした結果、あれがただの野太刀でない事は分かっている。しかし、あれ程の業物―――しかも、大太刀なのに聞いた事もない名前だ。打刀なら数が多すぎる為、知らなくても無理はない。
「名前がないから、大太刀の銘で――、か」
そこで俺はかつて共に戦った『剣の少女』を思い出していた。『セイバー』と呼んでいたあの少女は、その呼び名の通り、俺の剣となってあの戦争を共に戦ってくれたのだ。
思えば、この少女に初めて助けられた時にも彼女の事を思い出した。 あの戦い方といい、自分を剣の名で呼ばせている所といい、案外と似ている所が多いのかもしれないな。
「けど流石に剣の銘で呼ぶのはな……」
なんて呼べば良いのだろう。
不思議と俺は、この少女には刀剣のイメージを持っていた。普段の呼ばせ方を聞く以前からだ。あの戦いぶりの性かもしれないがな。
「なにいきなり考えこんでるのよ」
少女の言葉も耳に入らず、俺は考えていた。
セイバーと呼ぶのは流石に却下。あらゆる意味であの少女は剣その物だった。例えそれが、ただのクラス名だったとしても、あの名前は、あの少女にこそ相応しい名だ。
そもそも、俺の中のセイバーは彼女だけだから、この少女をセイバーと呼ぶなんて考えられない。
同じ感覚で付けてみるか。要は英語にしたら良いって事なんだろうし。
セイバーって言ったら即ち剣だ。同じ剣を現す英単語……か。
ブレイド? 却下だ却下。デイウォーカーのヴァンパイアハンターじゃあるまいし。
と言うか、剣じゃなくて刀のイメージだな。刀だったら……。
サムライソード! 来たッ! これだッ!
ヒテンにミツルギスタイル的な感じが良いネ。
全く、ネーミングセン
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