”狩人”フリアグネ編
四章 「名も無き少女」
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思ってた」
これでも譲歩した方だと思う、見た目だけだと中学生でさえ怪しいからな。
「そのレベルから話さないといけないわけ?」
はぁ〜、とため息をついて、気だるそうに少女は説明を始めた。
「まず言うけど、私は高校生でも中学生でもないわ」
ほぅ、そうなのか。
「薄々気付いてたけど、やっぱり小学生だったか!?」
やっぱり、その外見で高校生な訳はないよな。
「小学生な訳ないでしょ! 私はフレイムヘイズよ!」
うわっ、吠えたよ!
周りに会話が聞こえたらどうすんだ?
「はいはい、わかったよ。―――で、そのフレイムヘイズさんが何で高校にいるんだよ?」
大人しく話を聞く事にしておくか。もう吠えられるのは嫌だし。
「お前を狙う奴らを釣るには、近くに居た方がいいでしょ? だから、ここにいたトーチに割り込んだのよ」
その一言でその場の空気が変わった。こんな所にも犠牲者がいたのだ。
「割り込んだ―――ッ!? あんたは平井ゆかりじゃないのか!? 何で誰も気づかないんだよ、俺すら違和感を感じないなんておかしいだろ!」
どういう事だ、なぜ俺でも気付かない。確かに俺でも、道行くトーチが消えた時に違和感はほとんど感じなかった。けど、消えたという事実は認識出来ていた筈だ。
つまり、俺はこの世界の特異を認識出来る筈なんだ。なのに、どうして俺は目の前の少女を平井ゆかりだと認識しているんだ。
「割り込むってのは、他の奴が認識してた『平井ゆかり』って存在と私を挿げ替えるって事なのよ」
平井ゆかりの存在と挿げ替えた。そう少女は言う。
消え行く運命だったとはいえ、平井ゆかりを消す権利は誰にも無い筈だ。そんな権利があっていい訳がない。
淡々と事後報告のように話す少女………いや、皆の認識する『平井ゆかり』に対して、俺は何かを言えずにはいられなかった。
「確かに彼女はトーチだったんだろう。だが、あんたが彼女を消して良い筈がないだろ」
前の平井ゆかりと面識があるという訳ではない。むしろ、全く知らない人と言ってもいいだろう。だが、消えていった坂井悠二の為、そして自分の為にも少女に問いかける。
「遅かれ早かれこいつは消えてたのよ。それに、どうせ消えかけてたし。それに―――、お前だって“私と同じ”じゃないのかしら?」
「それは………」
「あの時に私が見た感じだと、その身体は“元はお前の物じゃなかった”と思うんだけど。違うのかしら? もしそうだったとするなら、お前に私を非難する資格はないわ」
確かにそうだ。坂井悠二の存在を塗りつぶした俺に、彼女を非難する資格はない。
例え、偶発事故の類いだったとしても、俺がした事は決して許される事はないって分かってる。そんな事は分かってるさ。
「その様子だと、図星かしら?」
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