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IS インフィニット・ストラトス〜普通と平和を目指した果てに…………〜
number-7
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様に表情はなく、もともとつり目だった蓮の目が鋭くなる。それは、本当に戦場に行く者の顔立ちで。その雰囲気からにじみ出ている極僅かな殺気。ほんの少しでしかない筈なのに、濃密な死を感じる。
佇まいから僅かに千冬は押された。気迫だけで、いつの間にか千冬は後ろに下がっていた。


出撃口にあるカタパルトの前に立つと、蓮は、瞳を閉じて軽く一つ息をつくと、閉じた瞳を開き、念じた。
その直後、ほとんどラグなしに光に覆われた蓮。光を放って、そのすぐ後には、ISに身を包んだ蓮がいた。黒に赤と白のライン。特におかしい所はない。ただ、やはり非固定浮遊部位(アンロックユニット)が目立つ。
周りの目など気にすることなく、蓮はカタパルトに乗り、アリーナへ飛び出していった。


      ◯


蓮がアリーナに出てくると、セシリアはすでに待ち構えていた。織斑との戦いで叩き切られたビットも予備のものを使っているのかは分からないが、元に戻っていた。しかし、織斑との戦いのときに見られたあの慢心は無くなっていた。
初心者に諭されるとは、もう終わってるな。それが蓮の心の中での言葉だった。


セシリアが何か蓮に向かっていっているが、蓮は、全く反応しない。出来るだけ、精神を極限まで高めていく。
蓮は、ISに乗るのは半年ぶりである。その間は、大学受験の勉強に必死になって取り組んでいた。ただ、それも無駄になってしまった。入学さえしていないのに、退学扱い。あんまりだった。けれども、蓮はそう落ち込むことはなかった。あくまでも前向きにとらえている。


観客席のざわめきが収まってきた。観客の生徒たちも試合が始まるとどこかで感じているのだ。よく見ると、一組の試合であるはずなのに、観客席にいる生徒は、明らかにそれ以上だ。だが、それは蓮の気にしたことではない。


――――試合、ね……


蓮は、自分が置かれている状況に染まっていると感じていた。
ISは、実際――――束が作った理由は、月に行くためだった。現にISで宇宙空間での行動を可能にしてくれる。だが、今ではそんなことに使われることなどありえないことだった。
兵器。一言で表すならこの言葉が一番適当であろうか。武装の開発と称して新兵器の開発、改造、量産をしている。束の願いなんて叶えられることがない。


そして兵器とは、人殺しの道具だ。
束は、本来の目的のために利用しようとしない世界に嫌気がさしていた。それに蓮が賛同したのだ。そのおかげで戦争というものを体験できた。――――人を殺すというのも。


蓮が意識を切り替えた。――――その途端。
向かい合っているセシリアに途方もない悪寒が背筋を駆け抜けて全身を覆った。と同時に、冷や汗が止まらなくなり、吐き気も催してきた。
意識を保つのも危うい。

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