第七十八話 諸行無常
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ともレイ――――君の命を掛け金にしてまで止めようとするべきではないだろう?」
英雄という立場は確かに強力なものではあるが、それは絶対的なものではない。前大戦の英雄であったアークエンジェルがそれをある意味証明しているだろう。今大戦時において彼らという存在は、少なくとも周りにとっては傍迷惑なだけの存在であったことは確かだ。なら、あえてそれを止めるほど脅威と言える称号でもない。
「ギル……」
自分のことなど構わずともと思うのだが、そう考える一方で嬉しく思うレイ。その様子を見ながら議長は言葉を続ける。
「それに、物事を成し遂げるためにはそれに見合う障害が必要だ。チェスの盤面の様に少しでも対等に近づけなくてはな。そうでなくては大衆にはその存在の価値は薄まって見えることになる」
例え対等でなくともチェスの様に見た目だけでも体裁を整えるべきだと議長は言う。そういった理由を聞いたことでレイは納得して受け入れた。
◇
「まだ足りないのか……それともこれで十分なのか?」
宛がわれた一室で腰を下ろすクラウは部屋の電気をつける事すらせずに独り言を話す。
「変えなきゃ終われない、終えることが無い……繰り返し、まだ続ける?馬鹿らしいな」
仮に他者に聞かれたとしても彼の言っていることの意味を理解できるものは居ないだろう。
「どうせまた役を演じて、それで終わり。いつも通りの演劇の終了――――そういう演目も飽き飽きしている。飽いている、飢えているというのかな。いつまでたっても終わらない連鎖に」
クラウが言っていることが何を指しているのか。誰にもそれは理解されるものではなく、クラウ本人にしかわからない。何せその原因となる出来事を体験しているのはこの世界にはクラウしかいないのだ。
「なんで、今更そんなこと考えるんだろうね。頭の中では理解してとっくに諦めたつもりのはずなんだけどな」
何を諦めたのか、何に対して理解したというのか。それもまた本人にしか理解できない。
「介入し過ぎたせいかな……らしくもない。面倒を嫌う性質なのにね、俺は」
そう言って彼は壊死した自己の内面を変えることもなく、ただ状況に流されることを良しとした。
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