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銀河英雄伝説〜悪夢編
第五十二話 良い思い出が無かったな
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ルフリーデが頷いた。アルバート・ベネディクトはそれを知ったのだろう。そしてエルフリーデを帝国に送り込んだ。明らかに彼の狙いは宰相閣下の命だった。エルフリーデはその道具にしか過ぎない。

「アルバート・ベネディクトが接触したのはお前だけか? 他に接触した人物は居なかったか?」
「……分からない」
「……エルフリーデ、あの店に戻りたいか?」
エルフリーデが激しく首を振った。

「分からないの! 本当に分からないの、居るかもしれないけど、私には……」
声が怯えている。
「分からないか」
「ええ」
エルフリーデが“本当に分からない”と必死に訴えた。宰相閣下は不満そうな表情だ。多分一番知りたい事なのだろう、もしかすると第二のエルフリーデが既にオーディンに入り込んでいるかもしれない、その可能性を懸念しているようだ。

「私が聞きたい事は他に有りません、後は内務尚書と憲兵総監で情報収集をして下さい。彼女の身柄は内務省の管轄とし情報収集が終了した後は法に照らして処分を」
宰相閣下の言葉にオスマイヤー内務尚書、ケスラー憲兵総監が頷いた。

エルフリーデが連れ去られオスマイヤー内務尚書、ケスラー憲兵総監が退出しようとすると宰相閣下が未だ話が有ると言って二人を引きとめた。
「オスマイヤー内務尚書、今回の一件、全て包み隠さず帝国、そしてフェザーンに公表してください」
えっと思った、私だけでは無い皆が驚いている。

「全て、といいますと……」
「全てです。エルフリーデが何をしたか、私が何をしたか、私とエルフリーデの会話も全て公表してください」
皆が顔を見合わせた。
「それでは閣下に対して恐れを抱くものが増えます、良くない風評も立ちますが……」
オスマイヤー内務尚書が反対すると宰相閣下が微かに笑みを浮かべた。

「構いません。エルフリーデを殉教者にするよりはずっと良い。あの女が惨めに死を請い願ったと公表してください。後に続く者はかなり減るはずです」
また皆が顔を見合わせた。
「閣下はそれが狙いであの様な事を……」
フィッツシモンズ准将が問い掛けたが宰相閣下の答えは無かった。オスマイヤー内務尚書が“御指示通りにします”と頷いた。

「内務尚書、国内に周知してください。今後国外追放者を帝国内で見かけたものは必ず帝国内務省に申し出るようにと。もしそれを怠った事が判明した場合は厳罰に処すると」
「はっ」

「フロイライン・マリーンドルフ、貴女はシュテルンビルト、ノルトリヒトの両子爵家に出向き直接彼らに伝えてください。間違っても馬鹿共に同情などするな、庇う様な事はするなと」
「はい、分かりました」

宰相閣下が私を見ている。同情するなというのは私に対する忠告でもあるのだろう。エルフリーデの件で閣下を諌めた事は軽率だった、あ
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