第五十二話 良い思い出が無かったな
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置いておけばよかった。そうすればお前は死なずに済んだんだ。俺が馬鹿だから、意気地なしで良い格好しいだったからお前を手放してしまった。阿呆な話だ、離婚だけじゃなくて永久にお前を失ってしまった……。
幸せなんて無縁な一生だったな。ずっと籠の中の鳥で籠から出たと思ったら殺されてしまった。一度でいいから屈託なく笑うお前を見たかった。何時かはそんな日が来ると思っていたんだが……。オスマイヤーが戻ってきた、正直ホッとした。思考がぐるぐる回るだけで馬鹿な事ばかり考える自分をようやく振り切る事が出来た。
エルフリーデは両腕を男に押さえられている。多分内務省の人間だろう。自由は奪われているのだが彼女は意気軒昂だった。勝ち誇ったような表情で俺を見ている。馬鹿な女だとまた思った。人を殺して喜ぶなどどう見ても正常とは思えない。この女に同情など欠片も必要ない。
「エルフリーデ・フォン・コールラウシュ、協力者は誰です?」
俺が問い掛けると微かだが嘲笑する様な表情を見せた。上等だ、もっと俺を怒らせろ、俺が後悔しないように……。
「答えなさい、誰に協力して貰いましたか?」
「お前に話す事等何も無い、殺しなさい」
嬉しそうだな、エルフリーデ。安心しろ、国外追放の身でありながら偽名を使って入国、伯爵夫人を殺したのだ、間違いなく死刑だ。
「口惜しいか、ヴァレンシュタイン。身の程知らず、成り上がりの卑怯者! 大切なものを奪われる気持ちが分かったか! 私達の悲しみが、怒りがどれほどのものか、思い知るが良い! 分不相応な野心を持った報いだ」
勝ち誇ったように喋るエルフリーデが可笑しかった、思わず笑い声が出ていた。この女は何も分かっていない。フェザーンに居る何者かに操られた駒でしかないのに自分が悲劇のヒロイン、復讐を果たしたヒロインにでもなったつもりでいる。
「何が可笑しい!」
身悶えして激昂する女の姿がさらに俺を笑わせた。皆が不安そうに俺を見ている。情緒不安定、そう思ったのだろう。残念だな、俺は今最高にクールだ。この女を痛めつける事に何の罪悪感も感じずに済みそうだと分かったからな。思いっきり残虐になれるだろう。
「お前が可笑しいのだ、エルフリーデ。私に苦痛を与えたと喜んでいるようだがその後の事を当然考えているのだろうな。私の怒りを受け止める事になるが……」
「殺せ!」
「殺す?」
簡単に死ねると思っているのか? また笑い声が出た。俺は信長じゃないし家康でもない。啼かないからといって殺したりしないし待ってるだけなんてのも御免だ。無理やり啼かせて見せるさ、俺のやり方でな、いやお前に相応しいやり方でだ。
「人を殺して喜ぶなど下劣な事だ。お前にはその下劣な精神に相応しい物を与えてやろう。死は時として安らかな眠りでしかない、私はそのようなものをお前
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