響の夏休み
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琉牙や真琴との喧嘩の翌日。響は朝の十時頃に起床した。
「口の中やっぱ切ってたなー。なんか血の味がする」
一階へ通じる階段を降りながら、響は顔をしかめる。うがいをするため、洗面台に向かい軽く口を漱いだ後、リビングへと向かう。
「腹減ったー。渉ーメシー」
言いながらリビングの扉をあけた響の顔は、一気に引きつった。
「やぁ響、お邪魔してるよ?」
「……何でテメェがこんな朝っぱらから家に居やがる奏嗣」
「朝っぱらって……もう10時だよ? 響が遅すぎるよ。ダメだよ? 夏休みだからってだらけたら」
「あーうっせぇなぁ! どう過ごそうが私の勝手だろうが! オイ渉! 何でコイツ家に上げたんだよ!」
響は台所に立つ渉にしかめっ面のまま問いただす。
「奏嗣先輩が実家で育てたお野菜とか持ってきてくれたんだよ。外暑いのにすぐに帰れなんてしつれいでしょ?」
「ハンッ! この体力馬鹿がこれぐらいの暑さでへばるタマかよ」
「こら響。女の子がそんな口の利き方を……」
「テメェは黙ってろボケ!」
渉との会話に入ってきた奏嗣を響きが睨みつける。すると、奏嗣は「やれやれ」といった様子で口をつぐむ。響も溜息をつくと、冷蔵庫からスポーツドリンクを取り出し一気に飲み干す。
爽やかな清涼飲料水が乾いた口に気持ちよく流れ込み、適度に響の頭を冷してゆく。
その間、渉はてきぱきと響の朝食の準備を始める。
そして数分後、あっという間に目玉焼きとトーストを作り終えた渉はテーブルに並べてゆく。
「はい、姉さん。できたよ」
「おう。サンキューな渉」
響は渉の頭をポンポンと数度叩き、礼を言う。その二人の姿を小さく笑いながら見つめる奏嗣は何かを思い出したかのように声を上げた。
「そうだ。もう一つ二人にお土産があったんだ」
奏嗣は上着の胸ポケットから何かのチケットと思しきものを取り出し、渉に渡す。
「これって新しくできたリゾートプールの団体様チケット!?」
「うん。昨日商店街の福引で当たってね。僕の家はもう誰も行かないから、響の舎弟の子や紫音さんと一緒に行ってきたらいいよ」
「え? 奏嗣先輩は行かないんですか?」
「こういうのは女の子同士で行って来たほうが楽しいでしょ? それに、響は僕がついて行ったら嫌なんじゃないかな」
「おう、ご名答だ。テメェなんかがいたら楽しいモンも楽しくなくなっちまう」
奏嗣には目もくれず、トーストに噛り付きながら響は肯定する。奏嗣もまたわかっていたように渉に「ホラね」というと苦笑すると、立ち上がり、
「じゃあ、僕はそろそろ帰るね」
そういうと奏嗣は片手を軽く挙げながらリビングから出て行った。それに
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