糸紡ぎ 蓮
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二十が人生の分かれ目だと何かで聞いた覚えがある。
そこから前と後での体感時間は同じだという話だ。
子供にとっての一年と大人にとっての一年。絶対的な物は同じでも主観では違う。
1/x
そのxに入る数字が大きければ大きいほど、見える数は小さくなるのだから。
小さければ感じるものも少なく、探し出すのも難しい。
幼子の頃、初めて武を意識し歩み始めた時。一体どんな歩み方をしたのか。ふと考えてみたがその答えは見つからなかった。
子の手を引くのは親の勤め。だがあの時、己の手を引いたものの顔を今の自分は覚えていない。
「……」
目の前にいる子供の何を言うでもなく見つめる。
自らが教えると豪語したのが昨日。そして今日となりメイファー・シュタットと言うメイドの元へこの子供を受け取りに行ったのがつい先程のこと。
だが未だ教える事を始めはせず、ただ思考を巡らせていた。
子供は自分の現状がわかっていないかのようにただじっと視線を向けている。
子は赤子から少し飛び出たほどの頃合だ。自分の足で歩き、言葉も喋る。
興味深そうに向けてくる瞳は自分の周囲を取り巻く人間にある怯えや機嫌を取ろうとする謙った色も見えない。
首をかしげるのに合わせ少し伸びた茶髪が慣性や重力でふるふると搖れていた。
纏まらぬ思考を纏めようと紫煙を曇らせている己の姿はどう映るっているのだろう。知らぬものが見たら親子とでも思われるのだろうか。
親というのならばあのメイドがいるが、血は繋がっていないという。
血の繋がりが全てだというつもりは無いが、気にかかる点が幾つかあるのも事実だ。
思考がぶれる。意識が寄り道をする。久々の感覚に戸惑っているのがわかる。
有り体に言えば困惑していた。
自らの技を教える。そう思ったのは間違いないし子にそれだけの才があるのも間違いないだろう。
だが目の前の幼子が現状、己の技をどの程度理解できるというのか。
昨日浮き足立った己の思考が今になって恨めしい。一体どこから始めればいいのか検討がつかないのだ。
眠そうにしている子を前に何か話さねばと思う。
「おい、お前歳は――」
「れいふぉん!」
どこか舌っ足らずな、けれどはっきりと子は言った。
「おまえじゃなくて、ぼくはれいふぉんだよ。おかあさんもそうよぶもん」
「……そうか。じゃあレイフォン、お前何歳だ」
「おまえじゃないのにー……いっさい。もうすぐにさいだよ」
頬を膨らませ怒りを表現しながら子供は指を二本立てる。
目の前の幼子と同じ年の頃の己が何をしていたか、どこまで武芸者としての身を理解していたなど覚えていない。
少なくとも己が錬金鋼を手に持ったのはもう数年先だったはずだ。
何が技を教
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