第二十二話 〜邂逅 -Numbers.【暁 Ver】
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────── ぜったいに、だいじょうぶ
口元を三日月に歪めたまま、ゆらりゆらりと人型へと近づいていく。あたしが乱れた呼吸を整えていると、突如としてアスナの足下が爆ぜた。静から動へ、一瞬の移動。幻のように消え失せ、現のように姿を見せたアスナへ人型はあたしを吹き飛ばしたときと同じように大砲の如き蹴りを撃ち出す。だが、アスナは──── 左の手のひらで造作もなく受け止めた。
「……アハ」
アスナは子供のような笑い声を上げると同時に、右の手のひらを人型の足首へ噛みつかせる。そして右腕だけで人型を吊り上げると、轟音と共に床へと叩きつけた。それにはアスナが今まで死に物狂いで身に付けた技術はない。唯々、気に入らない者を力でねじ伏せているだけ。人型の足首を持ちながら何度も、何度も。床へ壁へ柱へ叩きつけるその姿は……癇癪を起こした子供が人形を振り回しているようで──── 昔のアスナと姿が重なって。涙が溢れた。
溢れた涙を乱暴に拭う。泣いている場合じゃない。クロスミラージュの照準を合わせ躊躇なく引き金を引く。アスナは迫り来る魔力弾を避けた。思った通りだ。完全魔法無効化能力の事も忘れている。だけどこれでいい、隙は作った。後はあの娘がやってくれる。アスナ──── 戻ってきなさい。
スバルが悲痛な面持ちで、アスナの名を叫びながら疾風の如く飛び込んでいく。スバルを迎え撃つアスナは、しなやかな右脚を横薙ぎに振るう。スバルは飛び込んだ勢いのまま、それを跳躍してやり過ごした。勢いは、止まらない。スバルは跳躍と同時に猫のように体を丸めると縦に回転する。すらりとした左足が伸ばされたかと思うと、落雷のような踵がアスナに襲いかかった。
跳躍から縦に回転。勢いをつけての踵落とし──── 独楽鳥。アスナの技だ。あの娘いつの間に……。
「ボブ、状況は?」
ボブからのコールで強制的に目覚めさせられた桐生は、徹夜明けの胡乱な思考のままに声を発した。工房のワークチェアに飛びつくように座ると、素早く状況を確認する。
『アスナの理性が飛んだ。こちらの呼びかけには応じるものの、とりつく島もない』
「原因は?」
『ティアナが『Unknown』と交戦。攻撃を受け壁に叩きつけられた。背中を強打した事に依る一時的な呼吸困難と、転倒した際に口内を裂傷したが命に別状はない』
ボブの報告を聞いた桐生は安心したように息を吐く。だが、状況はあまり宜しくないようだ。
「ティアナさんは無事なんですね? ……自動制御は?」
『一瞬は『乗っ取り』出来るが、すぐに制御を奪われる』
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