第二十一話 〜休日と嫌な予感 後編【暁 Ver】
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────── 調子にのるな
バリアジャケットを身に纏い、皆と共に地下水路へ降り立つと、カビの臭いが嗅覚を刺激した。恐ろしく高度に整頓されているミッドの地下水路網ではあるが、やはり日が差さない場所というのは陰気なものだ。汚水処理施設を経由した水が人工的な川を形成している。環境や餌さえあれば、生き物が住んでいそうだ。
あたしは地下水路の両脇に設置された巡回及び作業用の通路で、バリアジャケットやデバイスのチェックを手早く済ませるとこう切り出した。
「さて、現状とあたし達の目的の確認よ。エリオとキャロが保護した少女はレリックと思われる金属ケースを二つ所持していた可能性がある」
あたしはそこまで言うとエリオへ視線を送る。
「はい。鎖にこう……絡まるようにしていたケースが一つ。鎖にはもう一つケースがあった形跡がありました。彼女が地下水路を歩いている時に落とした可能性があります」
「うん、あたしも同意見。少女の方は駆けつけてくれたシャマル先生達に任せておけば良いから……だから、キャロ? そんな心配そうな顔しなくても大丈夫よ」
「はい……」
この娘はマンホールへ入る瞬間まで少女から視線を離さなかった。何か思うところがあるのかも知れない。もしくは……優しいだけか。あたしは続けてキャロへ言葉を投げかけようとしたが、思い直す。今はこっちが先だ。
「あたし達の目的は、レリックと思われる金属ケースの探索及び確保」
「だけど、ティア。あの女の子って、どっちから来たんだろ」
スバルがそう言いながら、自分の前後へ首を巡らせている。言われてみればそうだった。この位置からではレリックと思われる反応はない。あたしもスバルにつられるように前後を見渡してみるが、通路の奥に薄暗い暗闇が、ぽっかりと顔を覗かせているだけだった。気がつくとエリオやキャロまでも前後に首を巡らせている。あたし達のその姿は、立ち上がって周辺をきょろきょろと警戒するミーアキャットのようで、我ながら苦笑した。
「問題無いわ。金属ケースは結構な重さだったし……」
その場にしゃがみ込んで視線を落としてみると、思った通りだ。何かを引きずったような跡。それにしても……あたしはそのまま上を見上げる。あの小さな体で金属ケースをぶら下げたまま、ここを昇ったのか。しかも、エリオの話を聞くとマンホールの蓋を自分で持ち上げて現れたらしい。
マンホールの蓋はあまり軽くしてしまうと意味がない。車両などが通過した時に、その衝撃で外れてしまう可能性があるからだ。その重さは──── 四十キロから五十キロ。あんな小さな子供に持ち上げられる重量じゃない。事情はわからないにせよ、あの少女には同情できる。だけど
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