暁 〜小説投稿サイト〜
剣の世界の銃使い
臆病な殺戮者
[2/3]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話



もう治った、いや克服出来たと思ったんだけど。やっぱり、無理らしい。頭の中に浮かんでくるのは、あの光景―――――――――――――――。

「っ!!」

オレンジたちは短い橋をドカドカと駆け抜け─────

「オラァァァ!」

「死ねやァァァ!!」

半円状に取り囲み、斬りかかろうとして─────

ドサッ・・・

一番最初に斬りつけてこようとした、刀を持った男の腕が落ちる。比喩ではなく、実際に。落ちた腕はポリゴンの欠片となって消えていった。《部位破壊》、HPとは別にある体の各部の耐久度がなくなった時、その部位が消滅するシステム。消滅といっても永久ではなく、街の中などに戻ればすぐに再生はするが。

「は・・・?」

腕を破壊された男が呆けたように呟く。それを見て、一瞬オレンジたちの動きが止まる。その間にまた別な一人の片足が飛ぶ。

「お・・おい、お前・・・今、何しやがった・・!」

「何って、部位破壊だけど?」

斬る、斬る、斬る、斬る―――――――――

前にいるすべての物を切り落とす。この行動心理に従って、体は動き続ける。
短剣スキル初級間接技、《ショートスラッシュ》。短剣から、薄い水色の小さな衝撃波が目にも止まらぬ速さで飛び、また一人の腕を飛ばす。
これが先ほどの部位破壊のタネだ。ひたすら敏捷力にパラメータを振っている故、俺の使う衝撃波はもう斬撃と呼べるまでの速度と切れ味になっている。さらに腕の中で最も耐久度が低い腕の付け根を狙えば、簡単に部位破壊ができる。
ようやく相手側もタネが分かったのか、残ったオレンジたちが一斉に武器を振り回してくる。だが、

「遅い」

武器の射程に俺を入れた奴から部位破壊をしていく。スキルの待ち時間(ディレイ)中に近づいてこようとする奴には投剣で足止めし、そのまま斬り捨てる。俺を中心に衝撃波の嵐が巻き起こる。
これが俺が《臆病な殺戮者》と呼ばれている由来の一つ。絶対に相手の射程に入らず、射程外からひたすら相手を攻撃していき、一撃も食らわずに片付ける。

これが、決して相手から届かない位置から攻撃する臆病者(・・・)で、すべてが終わるまで止まることのない殺戮者(・・・)である俺の戦い方。

斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る―――――――――――

そして由来のもう一つがこれ。オレンジを前にすると、体が止まらなくなる。今でこそまだ頭では冷静でいられるが、この二つ名をつけられた当時はもうひどかった。
それに、どうしてもオレンジは許せない。これだけはいつまでたっても俺の中から消えていないようだ。
目の前のものが全て動かなくなるまで、今の俺は止まらない。というよりも、止めることができない。その間ずっと、頭の中ではあの光景が繰り返される。

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ