臆病な殺戮者
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「れ、レイトさん・・・人数が多すぎます、脱出しないと・・・!」
俺の後ろに隠れていたシリカが小声で囁きかけてきた。
「あー、ごめんね。早くピナ戻してあげたいんだろうけど」
「え・・・?いや、そういうことじゃなくて・・・」
あー、やばい。そろそろ、危ないな。
「ちょっと嫌なところ見せるから、もう少し下がってて。あ、先に帰っててもいいよ?」
多分、もう戻れない。シリカを巻き込むことはないと思うけど、やっぱり心配だなぁ。
シリカの頭をぽんぽんと軽く叩くと、そのまま橋に向って歩いていく。
「レイトさん・・・!」
その声がフィールドに響いた途端─────。
「レイト・・・?」
不意に賊の一人が呟いた。さっきまでの笑いを消して、記憶を手繰るように視線を彷徨わせている。
「朱のコートと両手に短剣・・・────《臆病な殺戮者》・・・?」
急激に顔を蒼白にしながら、男が数歩後ずさる。
「や、やばいよ、ロザリアさん。こいつ・・・攻略組だ・・・」
オレンジたちの顔が一様に強張った。まあ、そうだろう。最前線で未踏破の迷宮に挑み、ボスモンスターを次々と屠り続ける《攻略組》がこんなところにいるのだから。後ろで同じように驚いているシリカみたいな《ビーストテイマー》よりも《攻略組》は珍しいと言われている。まあ、人数で見れば、ビーストテイマーの方が珍しいのだが。
攻略組は言っちゃ悪いが、廃ゲーマーがほとんどだし。俺もそうだけど、攻略組の奴らって、モンスター見たらあっちが何もしなくても、先に攻撃仕掛けるだろうしなぁ。うん、相手に歩み寄ることができるビーストテイマーの方がすごいと思う。
「こ、攻略組がこんなとこをウロウロしてるわけないじゃない!どうせ、名前を騙ってびびらせようってコスプレ野郎に決まってる。それに──もし本当に《臆病な殺戮者》だとしても、近づけばたいしたこと無いわよ!!」
「そ、そうだ!攻略組なら、すげえ金とかアイテムとか持ってんぜ!オイシイ獲物じゃねえかよ!!」
ロザリアの一言で勢いづいたように、オレンジたちが叫んだ。
「こんな事なら、誰か連れてくればよかったかな・・・」
ぼやきながらも、橋がかかっている先端にたどり着くと、またシリカに呼びかけられた。呼びかけられたというよりは、叫ばれたの方が正しいか。
「レイトさん・・・無理だよ、逃げようよ!!」
後ろでまだシリカが何か言ってるが、もう聞こえなくなってきた。そして、両腕をだらりと下げる。それをオレンジたちは諦めと取ったのか、ロザリアなどのグリーンプレイヤーを除いたオレンジたちが武器を構え、猛り狂った笑みを浮かべ、こちらへ向ってきた。
すまんね、限界だ。
プツンと頭の中で何かが切れる。
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ