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地雷原
退屈しのぎ     第二部

[8]前話 前書き
倉田僚
ふーん....
行ってくるか

何もない部屋。
あるといえば通販で購入したパソコン一台それのみ、監獄ともいえる
その部屋が世捨て人となった彼の唯一の居場所でありその生活は
彼が中学二年の時から成り立っていた。
そうまさにそれは空虚という二文字が適切であろう。

彼は母子家庭の子であった。
夫が事故により早くに先立たれ、母の手ひとつで懸命に育てられ、息子である彼は
そんな母の思いにそえるよう彼もまた勉学に努め、懸命に生きていた。
「すべては母のため」
その思いを彼は幼きころから常に支えにしていた。
そう生き物が自然と食べ物を欲するように、それは彼にとって当たり前の
ことだったのだ。
貧しさ故にからかいの対象になることは必然。
同じ服を二日、三日続けて着ていくことは彼にとって仕方のないことだが他の者はイコール
「あいつ不潔〜」
「あいつとは遊ばないようにしよう」
「あれに触ると菌がつくぞ〜」
どの貧しさのひとつをとっても彼はからかわれた。いや、いじめられた。
仕舞いには影で「あいつ」ではなく「あれ」になっている。
そんなことが毎日のように起こればいくら母のためにと思い心配をかけまいと
決心し涙を流す姿を隠していてもまだ子供。
こらえ切れるわけがない。
そんな時は誰もいない自分の小さな部屋で声も出さずにさぁっと泣くのが、
彼の決心の強さの象徴でもあった。
そんな苦しくあったが親子で心から笑い合い幸せな日々を彼の幼少期の大半を
占めていた。
しかし彼の、彼というところを失う事件がおきた。
その事件が起こったのは彼が有名中学への進学が決まり、明日から中学生活
というときであった。

最愛の母が死んだ。



その日を境に彼は自分という存在が崩れていった。
ガラスにレンガを思いきりぶつけた、そんなかんじだった。

親戚に引き取られてからというもの、彼は腑抜けであった。
何もせず、ただの倉田僚という大きな固体となった。
それもそのはずである。
支えであった母がいなくなることは、ガソリンの入っていない車に走れと
言っているようなものである。

そして今、彼は17歳。
彼もまた
人生やり直しませんか?
という胡散臭い記事に目が留まっている。




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