第一物語・後半-日来独立編-
第五十八章 解放《3》
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赤め、落ちていた空気が上がっていくのを感じた奏鳴。同時にセーランに対して。
「卑猥だ、お前は卑猥だ!」
「卑猥じゃない。俺は正直者なんだ」
「なら少しは自重をだな」
「やっぱ卑猥野郎で」
「どっちだ!?」
「ごめん、やっぱり正直者の方を」
「もうお前はよく分からん」
何を言っているんだ、と奏鳴は思った。
こちらが真剣に話しているのに真面目に聞いているのかと、いや、多分聞いていないのだろう。
数少ないが、見てきた覇王会会長のなかで一番覇王会会長には不適切な者だ。これが日来の覇王会会長などと、すぐに分かった者はおかしい。
頭とかその他とかが。
調子を狂わされた奏鳴に対し、セーランはふざけた感じを残しつつも何処か真剣な雰囲気を醸し出していた。
「人生そんなもんだ。分からないことだらけさ。だったら、分からないなら知りたくならないか?」
「何をだ」
「世界のこととかさ」
奏鳴は首を傾げる。
話しの変わる速度に付いていけてないためだ。それに、ここで世界を出す意味も分からなかった。
解らないからこそ、セーランの言葉に引かれた。
「世界にはいっぱい知らないことがあるぞ。神州瑞穂にいるだけじゃ分からなかった沢山のことが、世界に出れば分かるんだ」
「お前達は崩壊進行の解決のために世界に出るのだろう。なら私には、関係無いことだ」
「いいや、付いてくるべきだ」
「何故だ」
「生きる気力が無いならさ、気力が湧くように行動するべきだろうよ」
「お前は私にこれからも苦しみを味わえと言うのか」
数回、セーランは首を横に振る。
「もう味わう必要なんてねえだろ。これまで後悔し続けてきたんだ。少しは楽になってもいいんじゃないのか」
「許されないことをしたのだ。それ相応の償いが必要だ」
分かっている。だから彼女はここに立っている。解放という死の選択を選び、今ここにいるのだ。
されどセーランにとってそれは、愛した者との別れでもある。
片想いながらも、いまだに想い続けていた。
「行こうぜ奏鳴。そんな深く考えなくても、背負えない償いは半分ずつだ。一人で償おうとするな。一人で、んな重いもん抱え込んでたら身体がおかしくなっちまう」
「しかし……」
答えを出せずにいた。
言葉を吐き出せばいいだけなのに、肝心の言葉が喉に詰まって出てこない。
決心が揺らいでいることを、静かに奏鳴は気付いていた。
更に揺さぶりを掛けるかのように、セーランは解放されている自身の身体の様子を見てから言った。
「時間が無い。解放されれば楽かもしれねえけど、結局それは償いから逃げたってことだ。苦しいから逃げ出して、本当にそれでいいのか」
「でも……私は……」
「大丈夫だ。お前にはこの俺が付いてる」
胸に手を当てセーランは言う。
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