第二十話 〜休日と嫌な予感 前編【暁 Ver】
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を示すものの機嫌は直らず。どうしたものかと頭を抱えていると、アスナ自身から折衝案が示された。
──── 三人いっしょに乗れるバイクをかえばいい
三人乗りのバイクといえば真っ先に思いついたのがサイドカー。だが生憎とサイドカー付きのバイクは高い。ミッドでは殆ど見ないし、あたしが知る限り作っているメーカーも現在は無い筈だ。それをアスナへと告げると、ちょっと待ってろと言い残しどこかへ行ってしまった。
戻ってきたアスナは一枚のメモをあたしに押しつけると、明日ここへ行けと告げた。どう言うことなのか聞いても、行けばわかるの一点張り。結局、次の日にメモへ書かれた丸っこい字を頼りにたどり着いた場所は……B.M.Sの本社だった──── 『バークリー』の関連企業だ。悪い評判は聞かないし、候補の一つにも入っていたメーカーだったから、あたしとしては是非もなかった。
結果的に普通の新車を買うよりも安く済んだのだが、少しばかり気になる点がある。アスナは今まで自分から、バークリーの人間だと言った事は一度もない。匂わせる態度もなかった。だとすれば。アスナにはとことん甘いあの人が一枚噛んでいるはずだ。
「あぁ、ばれてしまいましたね。余計な御世話かもと思ったんですが、アスナに頼まれてしまいまして……紹介させて頂きました。勿論、最終的な判断はティアナさんがお願いします。安い買い物ではありませんから。私やアスナのことは気にしなくて大丈夫ですよ」
お兄さんはそう言ってくれたが、あたし自身メーカーに拘りは特になかったし、自分の嗜好や求めるスペックに合致していれば何処でも良かった。所謂、『ブランド』に拘る人も中にはいるが、あたしはそのタイプじゃない。権力……コネクションと言い換えても良いが、正しい使い方だと思う。
いずれにせよ今回はアスナとお兄さんには感謝だ。その肝心のアスナを探したのだが姿が見えない。今日が納車だと教えると朝からあんなに落ち着かない様子を見せていたのに。きょろきょろと視線を彷徨わせるあたしに、ヴァイス陸曹が気がついたのか、声を掛けてきた。
「何を探してるんだ、ティアナ。……あぁ、もしかしてアスナか。ほれ」
ヴァイス陸曹がそう言いながら体を一歩横にずらすと──── サイドカーにすっぽりと体を納めたアスナがいた。自分から狭い場所に入り込む猫のようだ。
「何やってんの?」
「……この場所はぜったいにゆずらない」
「いいわよ、そこで。前から約束してたでしょ? それと……靴は脱がなくていいのよ」
「アスナ、髪は纏めておいた方がいいぜ」
「……や」
「アスナ? ヴァイス陸曹の言う通りだよ。タイヤに巻き込まれたら大変だから。今はガソリン車が殆ど無いから匂いは大丈夫だけど……髪を縛るのが
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