六十三 濃霧に沈む
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に取り決めていたのである。
そしてまた、イタチ及び彼の仲間と対峙する者が誰であっても、例え指名手配されている抜け忍であっても見逃すよう手配を頼んでおいたのだ。
橋周辺に人気が全く無かったのも、木ノ葉の増援が来なかったのも、抜け忍同士の派手な戦闘騒ぎに誰も駆けつけなかった事も、全てダンゾウの計らいによるものだ。ナルトが事前に人払いを頼んでおいたからである。
まさかイタチが『うちは一族殲滅事件』の真相をサスケに伝えているなどとは考えもしなかったダンゾウ。つまり彼は間接的に兄弟仲を取り持つ助力の一端を担ってしまったのだ。
また、火影直属である表の忍び、つまりはアスマと紅が再不斬達を追跡しようとしたものの、『根』に食い止められたのも、ナルトが前以てダンゾウに裏で手を回すよう要請していた為。
しなやかに撓む木々の枝を軽く蹴って、ナルトは背後を振り返った。既に見えなくなってしまったが、橋があった方角を流し目で見遣る。木々の合間を透かし見るように彼は目を凝らした。橋上に掛けた術が完全に消えているのを確認する。
五感の遮断及び幻術の二重結界と零尾による憑依及びチャクラ吸収。そして更にナルトはその上に幻術を掛けておいたのだ。
時間や空間、質量などあらゆる物理的要因を支配する精神世界。その中にイタチとサスケを引き摺りこんだ上で話し合いをさせていたのだ。零尾にチャクラ使用可能にしてもらった、あの時である。
いくら零尾の力で打ち解けやすくなっているとは言え、イタチとサスケの蟠りを溶かすのは時間がかかる。だから彼は時間の干渉が及ばない空間にて討議させたのだ。例え精神世界で三日経てども、現実世界においては一瞬にも満たない。
だからこそサスケはイタチを信じる事が出来たのである。何度も何度も意見をぶつけ合い、お互いに激しく議論した。その結果は言うまでもない。
流石にイタチは零尾以外の術は気づいていたようだった。それ故に、別れ際ナルトに解術を求めたのだ。
現実に戻る。無情だが、此処が己の生きる世界なのだと。
再び生き別れる兄弟。しかしながら、誤解が誤解を招いた前回と違い、今回は双方共に精神世界の体験が残っている。
だから今のサスケはもう兄を復讐の対象としては見ないだろうと、ナルトは口許を微かに緩めた。
そしてようやく白に視線を戻す。
「そうだな…」
己を案じるあまり憂色を漂わせる彼を見て、ナルトは微笑んだ。
「それじゃあ、久しぶりに会いに行こうか」
木ノ葉の人間に気づかれずに里外へ通じる門を潜り抜ける。眩い白日の下、彼は穏やかに笑った。
それは太陽にも負けないくらい眩しげな笑顔だった。
「重吾に」
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