六十三 濃霧に沈む
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げに頭を掻いた。一頻り唸ってから、罰が悪そうに「わ、悪かったな…」と呟く。
まさか自分に掛けられた言葉だとは思わず、ナルトは思わずきょとんとした。サスケへ視線を向けると、物凄い勢いで顔を逸らされる。
だが真っ赤に染まった耳がサスケなりのお礼の言葉だった事を明らかにしていた。ナルトの口許に笑みが湛えられる。
今、彼の胸中を占めるのは、仲睦まじい兄弟に戻れたイタチとサスケを祝う歓喜と若干の羨望。
しかしながら、今回の行動が後にどのような影響を及ぼすのか、この時ばかりはナルトも予想出来ていなかった。
「こちらこそ、ありがとう」
逆に述べられた礼に、サスケは怪訝な顔で振り仰ぐ。写輪眼に、嬉しそうに細められた青い双眸が映った。
「イタチを信じてくれて」
何時の間にかナルトは橋の欄干に腰掛けていた。不意に仰け反る。驚いたサスケが手を伸ばすが、その手をすり抜けて、重力に従い墜落してゆく。
慌てて駆け寄り、橋の下を覗き込むサスケ。だが彼の瞳に映ったのは、水面にゆらゆらと揺れる自身の顔と、その上に浮かぶ一枚の木の葉。ただ、それだけだった。
一足先に橋から遠ざかっていた再不斬達と合流する。走る速度を落とさなかったにも拘らず、ナルトはすぐに追いついた。
木ノ葉から無事脱出する経路を【神楽心眼】で探っていた香燐が歓喜の声を上げる。抱きつこうとする彼女を視線で制し、白が気遣わしげにナルトを見つめた。
アスマと紅を足止めしていた白。彼は撤退する頃合いを正確に判断し、【魔鏡氷晶】の術を解いた。鏡に潜っていたキンと共に、白と再不斬の姿を模った水分身と入れ替わる。その上で【霧隠れの術】により発生した霧を霧散させ、霧が晴れると同時に水分身を水に戻す。
そして今現在は、ドスと同じく木の上で周囲を窺っていた香燐を筆頭に、橋周辺から遠ざかる最中だったのだ。
追っ手が来ないか後方を気にしながら、白を始め五人の忍び達は視線こそ前方に向いているものの、皆がナルトの様子を窺っていた。
「少し、休養をとったほうがよろしいのでは?」
その言葉にナルトは聊か驚いて目を瞬かせた。木から木へ飛び移り、白の隣に並ぶ。
「そうかな?」
「そうですよ」
白の間髪容れない催促にナルトは苦笑した。さりげなく再不斬の肩に乗せられている少年に目をやる。『根』の包囲網をよく突破出来たな、と感心すると共に、彼は以前ダンゾウと取り決めをした内容を思い返していた。
『木ノ葉崩し』直前、ナルトは『根』の創始者たるダンゾウと取り引きをした。
大蛇丸と取り引きしていた事実を明るみに出さない代わりにイタチの汚名返上の手助けを行い、尚且つサスケの暗殺を取り下げるよう、彼はダンゾウに要求した。その際、イタチが里に来た場合の対処法もこの時既
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