第十九話 〜活躍と暗躍 ホテル・アグスタ【暁 Ver】
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うが、この方があたし達らしい。さて、それぞれの持ち場へ着こうと考えていた時。幾分緊張を孕んだシャマル先生の声が、あたし達の鼓膜を揺らした。
「前線各員に通達します────」
桐生はアグスタ裏手の外壁まで跳ぶと、躊躇なく壁を『抜ける』。進入した先は無人の配電室。桐生は部屋の中程まで歩を進めると、『何か』を確認するように床を見つめ……今度は床をすり抜けた。
無骨な天井から烏のように舞い降りる黒い影。桐生は音もなく地下駐車場へと降り立つと、監視カメラや巡回する警備員に注意を払いながら、無人の地下駐車場を歩く。目的は輸送用のトラックだ。該当するトラックを【千里眼】を使いながら、次々と『中』を確認していく。無い。違う。これも違う──── 見つけた。
それは、何の変哲もない一台のトラックだった。
「あらら。随分と出てきちゃったね、ガジェット。……何で彼はこういう時にいないんだろうね」
「さあ。『俺には他にやることがある。それとも俺がいなきゃ何も出来ないなどと、言うつもりではあるまいな?』とか言ってたじゃない。あるまいな? って。……よし、バリアジャケットとデバイスの起動許可が降りたわ」
「何で最後だけ二回言ったの。やめて、笑っちゃうから」
今回の総指揮であるシャマル先生から、前線のモニタを回して貰い状況を確認する。かなりの数だ。ヘリで八神部隊長から説明された通り、スカリエッティが噛んでいるとみて間違いないだろう。
「あたし達の役目は、ここの防衛線を維持すること。ここを抜けられたら終わりよ、気合い入れなさい。エリオとキャロも合流するわ。スバルはあたしとツートップ。アスナは遊撃。キャロが合流したら彼女を守りつつ、ここに接近するガジェットを片っ端から叩き落としなさい。以上、質問は?」
「前線は?」
「シグナム副隊長とヴィータ副隊長が当たってる。あたし達は二人が撃ち漏らしたものだけ墜とせば良いわ。他には? ……ないわね。それじゃいくわよ」
「Setup」
「……Expand Start」
さて、借りを返すという名目の『八つ当たり』をさせて貰いましょう。
実のところ、ガジェットドローンと呼称される機械は、然程脅威ではない。ガジェットの真の怖さは『数』だ。オーバーSランクを誇る優秀な魔導師であっても、経験豊富なAランク魔導師十人を相手にして勝利するのは至難の業だろう。それと同じだ。にも拘わらず、彼女たちが互角以上の戦いを見せている事実は、驚愕に値すると言っても良かった。だがそれも、イレギュラーな事態が発生しなければの話である。
「ヴィータ!」
戦場にシグナムの鋭い声が飛ぶ。
「わかってる! クソ、何だこいつら。急に
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