第十九話 〜活躍と暗躍 ホテル・アグスタ【暁 Ver】
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な丘。そこに──── 周辺にある木々の影と同化するようにして『黒い男』が佇んでいた。
「緊張して体が動かなくなってしまうよりは、余裕があるくらいの方がいいですからね」
『緊張感がなさ過ぎのような気もするが。それにしても……桐生は黒いな』
アスナにも同じようなことを言われた桐生は、困ったように頭を掻いた。あの世界にいた頃。その能力を買われ諜報活動も多く熟していた。それにも今して戦場では物資が貴重だったのだ。桐生としては夜間に目立たず、長く着ていても出来るだけ汚れが目立たない物を選んでいたら、結果的に真っ黒になってしまっただけであった。そして──── 思い出すのだ。あの頃の感覚を。
「大きなお世話ですよ。彼女たちは?」
『あと、十五分ほどで到着だ。で、どうするんだい? 桐生』
「あなたはアスナのサポートを。こちらは放っておいてくれて構いません。それと」
桐生はそう言いながら、自分とは反対側に位置する場所を見つめると目を細める。
「誰かいますね。男性と……少女。距離があるので、気付かれてはいないでしょうが」
『便利だね。【千里眼】だったか。誰かわかるかい?』
「……いいえ。見たことはありませんね。一見すると親子のようにも見えますが」
『我々も人のことは言えないが、不自然だね』
「放っておきましょう。私の邪魔にならなければ問題ありません」
『いいのかい? 君が良いのであればそれで構わないが……了解だ』
桐生はボブの声が聞こえなくなるのを確認すると、アグスタへと視線を向け──── 『跳んだ』。
「ティア、隊長達見た? 綺麗だったねぇ」
「スバルも会場警備にして貰ったらよかったじゃない。ドレス、着られたわよ?」
「ドレスって柄じゃないしね。でも、なんでドレス?」
「オークション会場内はドレスコードが厳しいし、仕方ないでしょ。……隊長クラスを三人、会場内に配置する必要があるのか、疑問だけど」
「ティアは、またそんなこと言って……あれ? アスナは?」
あたしは無言で、指を指し示す。その先には、珍しく制服を着崩していないアスナがいた。彼女はアグスタへ着くや否や、周りを取り囲んでいる木々の前をうろうろしたり、じっと見つめたりと挙動不審な行動を繰り返していた。何をしているのかはわからないが、やがて満足したのか子供のような足取りで、あたし達の元へ戻ってきた。
「あ、アスナも綺麗だったと思うよね?」
「……なんのこと」
「見なかったの? 隊長達」
「……しらん」
「ふっ。興味ないな」
「ティア? 誰の真似、それ」
「六課に来たスパイ君」
任務遂行中だというのに、少々不謹慎だと思
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