第十九話 〜活躍と暗躍 ホテル・アグスタ【暁 Ver】
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。全身を見えない手で、鷲掴みにされているような感覚。
「いいから落ち着いて話を最後まで聞け。アスナが絡むと本当に人が変わるな。……犯人は確保してあるし、データがどこにあるのかも把握してある」
「……すみませんでした」
桐生は後悔するように、俯いてしまう。レイは悪戯をしてしまった子供を見るような目で、桐生を見つめると優しげに口を開いた。
「いや、いい。こうなってしまったのは、私の責任だ。すまなかった」
「いえ、頭を上げて下さい。ですが……なぜ、そんなものを」
「データを持ち出したのは、ウチの研究施設に勤めている人間でな。こいつが、ある犯罪者と繋がっているらしいとの情報を掴んで、内偵を進めていた矢先だった。迂闊だったよ」
「データはどこに?」
「実はな……今、現在どこにあるかは、わからん。だが、一週間後にアグスタの地下駐車場へ運び込まれるそうだ。我々には然程価値の無い研究成果と一緒にな。骨董品に偽装した上で、引き渡す手筈らしい」
「なぜ、一週間後なんです? 運び込まれる前に確保すれば良いだけの話です。その男の記憶を読みましょうか?」
「死んだよ……自殺した。重ね重ね、すまない」
「運び込まれたところを確保するしかありませんか……」
桐生は諦めたかのように、天を仰ぐ。
「実はな? 一週間後にアグスタで骨董美術品のオークションが開かれる。密輸取引の温床になっているという噂もある、きな臭いものだがな。それ自体は問題無いんだが……当日のオークション会場を警備するのが、その、機動六課らしい」
「だから、私ですか」
「バークリーは、一民間企業に過ぎん。派手に動くわけにはいかんし、機動六課の警備網を掻い潜って、確保するのも骨が折れるだろう。一般の警備員もいるだろうしな。何より見つかった時の言い訳が出来んし、アスナとの関係を勘ぐられるのも避けたいのだ……アスナの立場が悪くなるのは、忍びないからな」
桐生は腕を組みながら、暫し考えに耽る。遺伝子情報の使い道は、予想通りのものだろう。自分に関しては問題無い。自分のクローンを作ったとて、能力のない一般人が出来上がるだけだ。だが──── アスナは不味い。厄介以前の問題だ。アスナのクローンなど許容出来るものでは、ない。
「……わかりました。幸いにも一週間ありますし、計画を練ってみます」
「すまない、恩に着る。アグスタの見取り図などのデータは、後で転送しておく」
「はい、お願いします。そうそう、その男と繋がっていたらしい犯罪者って……把握しているんですか?」
「あぁ、恐らく間違いないだろう。おまえも名前くらいは聞いたことがある筈だ。そいつの名前は────」
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