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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 後編
激闘、第五十層フロアボス攻略戦
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いつになく厳しいヒースクリフの号令に従って、ボス正面で半円状に布陣したタンク部隊が、手に持った盾を一斉に突き出した。直後、振り上げられたボスの五本の腕がクロスするように薙ぎ払われ、タンクたちを襲う。だが彼らとて精鋭中の精鋭。卓越した盾捌きと鍛え上げた防御力で、見事にその一撃を耐え切ってみせる。
 そしてその瞬間、攻撃(アタック)隊を率いるアスナの指示が出るよりも早く、マサキは地を蹴った。コンマ数秒遅れて、アスナからスイッチの号令が飛ぶ。
 腕の数が増えればそれだけ攻撃間隔が短くなり、スイッチのタイミングはよりシビアになる。が、マサキは関係ないと言わんばかりに全速力でボスに肉薄する。

 誰よりも早くボスに接近したマサキは、その速度を殺さぬまま、右手に握った蒼風を一閃。敏捷一極化ビルドの本領を遺憾なく発揮してボスの周囲を駆け抜けながら、《疾風(はやて)》の六連撃を刻み込む。ごく短い硬直を挟み、今度はその場で跳躍。空中でもう一度任意の方向にジャンプが可能になる《軽業》スキル派生Mod《ダブルジャンプ》で高さを稼いでボスの頭に跳びかかると、防御貫通特性を持つ刺突技《吹断(ふきたつ)》を放った。狭い箇所に連続して攻撃するほどダメージにボーナス補正がかかる九連撃技を一寸の狂いもなく同じ場所に叩き込み、そのまま肩部分を足場にして飛び降りながら後退する。
 着地してボスに向き直ると、再び攻撃部隊の代わりにタンク部隊が前衛に出て、重そうな盾を突き出していた。ソードスキルの淡い光の尾を引いて、刀や薙刀などがそこに殺到する。
 マサキが思い出したようにチラリと目線を動かすと、あの四人組が緊張しつつも上手く役割をこなしているのが視界に入った。隣にはエミも付き添っているようで、あの様子ならちょっとやそっとでは崩れないだろう。

 マサキは無意識に安堵の息を吐くと、蒼風を今一度握りなおし、攻撃チャンスを見逃すことなく再びボスに向かって行った。



「せあっ!」

 《ダブルジャンプ》で部屋の天井近くまで跳び上がったマサキは、気合の入った掛け声と同時に蒼風を振りかぶった。ボスもそれを把握していたらしく、腕の一本が向きを変え、その先端に握られた刀が迎え撃つように進路を塞ぐ。もしそのまま双方がぶつかった場合、筋力に劣るマサキが負けるのは明白。運が悪ければ追撃を受けてしまうだろう。
 だが、そんなことは織り込み済みだったマサキは一瞬ニヤリと笑ってみせると、迷うことなく振り下ろした。マサキの持てる敏捷値を全てつぎ込まれた風の刃は空気を切り裂きながら肉薄し、迎撃にせり上がってきた刀をすり抜けてボスの頭に直撃した。刀身を一瞬風に変換することで防御などをすり抜けることができる単発技《胴蛇貫(どうたぬき)》が能面のような顔に傷を付ける。

「……チッ」


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