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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 後編
激闘、第五十層フロアボス攻略戦
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ゃあ俺からも!」
「ちょっ、リキずるい! 私からもいいですか!?」
「……ご自由に」

 ついでに、立て続けの追加質問まで。

(……なるほど)

 ここでようやく、マサキはエミの狙いに気付いた。恐らく彼女は、この場で殆ど発言していないマサキと四人組が話すきっかけを作ろうとしたのだろう。そして、どうやら事は彼女の目論み通りに運んだらしい。

「人気者だね」
「止してくれ」

 何が嬉しいのかニコニコと笑うエミに、やや憮然とした風でマサキは返すと、フォークに突き刺さったままの肉を口に投げ込んだ。

 騒がしい雰囲気の質問会は、その後彼らがボス部屋に辿り着くまで延々と続いたのだった。



「いよいよなんだ……」

 ボス部屋に通じる扉の前、マサキの隣で僅かに怯えたようにジュンが言った。初のボス戦、しかもその相手がクォーター・ポイントともなれば仕方あるまい。他のプレイヤーの顔にも、いつもより緊張が色濃く浮き出ている。
 張り詰めた緊張の中、真紅の鎧に身を包んだヒースクリフはおもむろに扉に手を当てて――。
そして、押した。
 半端な衝撃ではびくともしないであろう重厚な石扉が、床と擦れ合いながらゆっくりと開いていく。
 瞬間、部屋の四方に据え付けられているたいまつに一斉に火が灯り、中央に鎮座しているそれを黄金色に染め上げる。

 無機質な表情の奥で妖しく光る瞳をこちらに向ける、能面のような顔。重そうな鎧にその身を包んだ、太く精悍な胴。……そして、そこから伸びる十もの腕と、その全てに握られている槍や刀、槌などの武器。
 仏像の類を彷彿させる異形の怪物。その頭上で弾けた名前は、《The soul ruiner(魂の摘み取り手)》。

 ――ゴクリ。
 部屋中に響いた音と共に生唾を飲み込んだのは、一体誰だっただろうか。そんな疑問と僅かな怯えを振り切るように、攻略隊は喊声(かんせい)を上げて部屋になだれ込んだ。まずヒースクリフに率いられた、見るからに重そうな鎧と盾で身を包んだ重装備のタンクプレイヤーが前に出て、ボスと対峙する。

 今回の攻略に当たって攻略組首脳部が採った戦術はいたってシンプル。(タンク)装備のプレイヤーを前線に並べて攻撃を防ぎ、その隙にマサキたちのようなダメージディーラーが攻撃を行う。壁役はローテーションで回し、平均HPが下がったり回復アイテムが枯渇したりした場合は、五十層転移門に待機している壁役を多く揃えた援護部隊を投入するという、要するに持久戦だった。今回のボスは、HPはそれほどでもないものの防御力がかなり高いことが確認されており、防御力の低い攻撃特化編成で短期決戦を挑むよりも、持久戦を展開したほうが堅実だと考えられたためだ。

「タンク隊、構え! 攻撃来るぞ!!」

 
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