プロローグ(2)
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後
「おい……おい、結!起きろって」
「う、うーん」
相棒に叩き起こされた15歳の少年・椎名結は、重い瞼を擦り、何度か瞬きした。
「お前、研究中に居眠りしてたんだぜ。ここ最近、よく寝てなかったんじゃねーの?」
「えっ!? わっ、嘘! うわー……研究どれだけ進んだ?」
結は身を乗り出して、所属する科学部の先輩──とは言っても幼なじみなので、変に畏まって敬語を使う必要はない──男子、河邑の手にあるレポートを横から見た。まったく進んでいない。
「ったく、お前が寝てたら全然進まねーよ……」
「ご、ごめん……。変な夢を見てたんだ」
「夢?」
「うん。何か、世界が終わってしまうような夢だった」
「学校の部室でなんと物騒な夢を……」
河邑が呆れ声で言う。「とりあえず、その寝グセ直してこいよ」と付け足される。結は慌てて手洗い場に向かった。
鏡を見ると、1人の少年がこちらを見返していた。
元々赤い瞳は、充血していて更に真っ赤。やや幼い顔立ちで、小柄で華奢。──自分だ。結は、鏡を覗き込むのはあまり好きではない。むしろ嫌いである。鏡に映る自分の姿を見る度に、ああ僕はなんて頼りない外見なんだ、と思わざるを得ないからだ。
結は落ち込んだ気持ちを振り払うように、少し長めの黒髪にばしゃっと水をかけた。
羽織った白衣のポケットには、携帯端末が入っている。現在の時刻を確かめようと、結はその画面をタッチした。
━━2024年2月10日 18:26
居眠りの開始時刻は恐らく同日の10:30頃なので、およそ8時間爆睡していたということになる。それだけ時間があれば、どれだけ研究が進んだことか、と思わず嘆息する。
研究と言っても、科学とはほぼまったく関係のないテーマなので、謂わば趣味だ。意味がないとも言えるその研究テーマは、?異世界が存在するか否か?。何ヵ月か前に、河邑とその話で盛り上がり、「確かめよう」ということで、この研究を進め出した。
しかし、そのテーマはあまりにも漠然としすぎていて、進行状況はあまりよろしくない、というのが現状である。
「……そろそろ、戻ろうかな」
結は小さく呟くと、長い廊下を歩いていった。
部室に戻ると、相棒がテレビを鑑賞しながら、3人用のソファーに座っていた。
科学部のメンバーは、結、河邑、そして結の双子の妹の3人。だからソファーは3人用。しかし、妹はとある事情で、6月以来部室に来れていない。
結は苦笑いを浮かべると、河邑の横に腰を下ろし、訊ねた。
「なに観てるの? ……ニュース?」
「そ。最近、物騒なネタも多いよなー……世界が滅びるとかさ。結、夢にまで見るってことは、もしや相当ビビってんの?」
「ち、違う
[8]前話 [1]次 最後
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ